アプリ開発では、開発案件に合ったフレームワークやライブラリを利用すると効率よく作業を進めることが可能です。ゼロからフルスクラッチで構築するよりも工程数が少なく済みますし開発コストも削減できます。
ただし、フレームワークにはメリットだけでなくデメリットもあります。使用しているプログラム言語や、搭載されている機能もさまざまであるため、どのように選ぶべきか悩む方もいるでしょう。
そこで本記事では、フレームワークの基本的な知識や、選択する上での注意点を解説します。
アプリ開発におけるフレームワークとは?

一般的にアプリ開発では、画面の表示、ユーザー操作への反応、データの保存や通信といった、あらゆる機能が必要になります。
フレームワークは、そうした基本的な機能をあらかじめ備えてある設計図のようなものです。この仕組みを活用すれば、開発者はゼロからすべてを作る必要がなくなるため、開発スピードの向上や品質の安定が期待できるほか、保守やアップデートもしやすくなります。
アプリ開発でフレームワークを使うメリット

アプリ開発でフレームワークを活用すると、さまざまなメリットが得られます。ここからは、代表的なものを順番にご紹介しましょう。
開発時間を短縮できる
ゼロからアプリを開発する場合、システムのルールを設定したりベースを構築したりしなければなりません。ジャンルや規模にもよりますが、半年以上かかるのが一般的です。
しかし、フレームワークを活用すれば、必要な部分を追記するだけでプログラムを構築することが可能。コードの記述量が格段に減るため、アプリ開発にかかる時間を大幅に短縮できます。
ミスやエラーが起きにくい
プログラムを組んでいく中で起きるのが、人的なミスです。どんなに熟練のプログラマーでも、記述ミスを完全に防ぐのは難しいでしょう。フレームワークを実装すれば、コードを記述する量を減らせるため、人的なミスを予防できます。
さらに、フレームワークには繰り返しテストされたコードを使用するため、信頼性が高いのも特徴です。実装後にもバグやエラーなどが起きにくく、安定した動作が期待できます。
セキュリティ対策ができる
ゼロからプログラムを構築する場合、開発者のスキルや知識不足により、システムに脆弱性が生まれる可能性が高くなります。さらに、セキュリティ上の欠陥を気づかずにアプリをリリースすると、情報漏洩や不正アクセスなどの被害をもたらすことも。
多くのフレームワークには、アプリにおける脆弱性への対策が組み込まれています。そのため、開発者が個別でセキュリティ対策を追加しなくても、外部からの攻撃に対する一定の防御が可能です。
また、フレームワークの中には、定期的にアップデートを行うものもあります。常に最新の状態が保てるため、高レベルのセキュリティ対策が実現します。
コストが削減できる
フレームワークを使用して作業時間を短縮できれば、開発にあたる人員やリソースを減らすことができます。結果として、制作にかかるコストの大幅な削減が可能です。
また、信頼性の高いコードを使用しているので、アプリ公開後の保守やアップデートが容易になります。運用・保守コストの削減にもつながり、長期的な視点でも大きなメリットをもたらすでしょう。
メンテナンス性が高くなる
複数人で開発を進める際に課題となるのが、人によってコードの書き方に差が出てしまうことです。担当箇所によって記述ルールが異なると、コードの可読性が低下してしまいます。また、アプリ公開後にエラーやバグが発生した場合、メンテナンスにも時間を要することになるでしょう。
フレームワークを使用すると、チーム内でコーディングルールが統一されるため、形式のずれを防ぐことができます。可読性も向上され、メンテナンス性も高くなります。
アプリ開発でフレームワークを使うデメリット

フレームワークはアプリ開発を効率化するうえで便利なツールですが、メリットばかりではありません。ここからは、事前に知っておきたいデメリットについて詳しく解説します。
自由度が下がる
フレームワークを使うデメリットとして挙げられるのが、ゼロからコーディングするよりも自由度が制限されるという点です。部分的なカスタマイズはできますが、その範囲には限界があります。
フレームワークの機能では対応できない場合、データの移行が必要になることもあるでしょう。たくさんの機能を実装する予定がある場合、最初からコードを組んで構築した方がよいケースもあります。
習得に時間がかかる
フレームワークの種類によって、必要なプログラミング言語や構築のルールは異なります。開発者は、これらを事前に理解しておかなければいけません。プログラミング初心者にとっては、大きな負担になる可能性があるでしょう。
プログラマーのスキルやフレームワークの難易度によって異なりますが、習得までには早くても数週間、場合によっては数か月ほどかかることもあります。アプリの公開期限が決まっているうえで、自社対応が難しい場合には、外部への委託を検討してもよいかもしれません。
関連ページ:アプリ開発の委託と自社対応の違いは?メリット・デメリットを解説
プログラミングスキルを習得しにくくなる
フレームワークを活用すれば、複雑なプログラムを組まなくてもアプリ開発が可能です。開発者のスキルが低くても対応できる点は大きなメリットですが、プログラミングスキルを習得しにくくなるという点はデメリットと言えるでしょう。
将来的にゼロからコーディングする必要性が出てきた時、プログラミングを基礎から学習し直さなくてはならい可能性もあります。また、アプリ公開後に何らかのエラーやバグが起きた時に対応できない、というリスクも考えられます。
アプリ開発におすすめのフレームワーク4選

アプリ開発をスムーズに進めるには、適切なフレームワークを選ぶことが大切です。しかし、たくさんの選択肢があるため、どれを選ぶべきか迷う方もいらっしゃるはず。ここでは、開発効率やパフォーマンス、対応プラットフォームなどの観点から、おすすめのフレームワークを4つご紹介します。
Flutter(フラッター)
Flutterは、Googleが開発したオープンソースのフレームワークです。iOS、Android、Mac、Windows、Linuxという5つのプラットフォームに向けたアプリを一度に開発できます。入力したコードを変換できるため、それぞれのプログラミング言語で構築する必要がありません。
シンプルなDart言語を使用しているため、直感的な操作ができるのもポイントです。また、ホットリロード機能が搭載されているため、コードを修正すると数秒でアプリに反映できます。アプリ開発において、効率を何よりも重視したい方におすすめです。
.NET MAUI(ドットネット マウイ)
Microsoftが提供している.NET MAUIは、1つの実装コードを使えば、iOS、Android、Mac、Windowsといった複数のプラットフォームで構築できます。多くのユーザーが使用することを前提にしているため、セキュリティ対策に力を入れているのも大きな強みです。
プログラミング言語には、ゲーム、VR、アプリ開発などさまざまな用途で使われているC♯を使用しています。シンプルな構文のため、プログラミング初心者でも学習しているのが特徴です。
.NET MAUIは比較的新しいシステムですが、エンジニアの間で高く評価されており、世界中にコミュニティが存在します。SNS上で質問をすれば、経験豊富な開発者から解決策やアイデアを得られます。問題解決にかかる時間を短縮できるため、運用面においても有用なツールです。
React Native(リアクト ネイティブ)
Metaが開発したReact Nativeは、オープンソースのフレームワークであり、エンジニアにとってなじみ深いJavaScriptを使用しています。そのため、効率よくプログラムを組むことができます。単一のコードベースで、iOSとAndroidの両プラットフォームに対応できるのも魅力です。
また、React NativeはFacebook、Instagram、Skypeなどさまざまなサービスで使用されています。世界中の開発者によって日々改良が加えられているため、今後さらなる利便性の向上が期待できます。
Ext JS(エクスト ジェイエス)
Ext JSは、Webアプリケーションを開発するためのJavaScriptフレームワークです。ユーザー数が増えても、サーバーを増やしたり、負荷分散をしたりすることで性能を維持でき、高い拡張性を備えています。
140以上ものパーツや機能が用意されており、複雑なアプリケーションの開発に適しています。マーケティングの必須ツールである顧客管理システムや、在庫管理システムなど、大量のデータを扱うアプリの開発に最適。
セキュリティ性も高いため、情報漏洩や不正アクセスなどのリスクを極力軽減したい方にとって、有効なフレームワークです。
フレームワークを選ぶ上で注意することは?
フレームワークをうまく活用すれば、大幅にアプリ開発を効率化できます。しかし、適切なものを選定できなければ、かえって開発が滞ってしまう可能性もあるでしょう。ここからは、選択の際に注意するべきポイントを解説します。
開発チームのスキルと合致しているか
フレームワークを選ぶうえで重要なのが、開発チームのスキルと合致しているかを精査することです。
たとえば、JavaScriptに精通したチームに対して、別のプログラム言語を使用するフレームワークを導入すると、チームはその言語や開発スタイルを一から学ぶ必要があります。
このような学習コストが発生すると、開発初期の生産性が落ちるだけでなく、仕様の理解不足や設計ミスによる不具合のリスクも高まります。
結果として、開発スケジュールの遅延や品質の低下につながる可能性が否めません。
反対に、開発チームのスキルに合うフレームワークを選択すれば、新しいシステムに適応するまでの時間は大幅に削減され、開発がスムーズに進みます。
また、慣れた環境で開発が進められるため、ミスが減り、チームの連携がとりやすくなるというメリットも享受できます。
以上から、フレームワークを選ぶ際は、開発チームのスキルに合ったものを選ぶことが重要であると言えるでしょう。
自由度は適切か
自由度が高いフレームワークは、さまざまな機能を実装できる反面、コードが複雑になり、動作不良やエラーが発生するリスクがあります。また、開発者によって実装方法が異なると、品質にばらつきが生まれたり、メンテナンス性が落ちたりする可能性も否定できません。
加えて、自由度の高いフレームワークには、さまざまな機能やオプションが提供されているので、コードの肥大化を招きます。不要なコードが組み込まれることで、アプリの起動時間や実行速度が低下する可能性もあるでしょう。
シンプルなアプリの開発を予定している場合、自由度の高さはかえって足かせになるケースもあります。目的に対して、必要十分な機能を備えたフレームワークを選定することがポイントです。
継続的なアップデートを期待できるか
長期的に使用できるアプリを開発する場合、アップデートの継続性を確認しましょう。アップデートが停止してしまうと、バグや不具合などを修正できず、アプリの品質が低下する恐れがあります。
フレームワークを選定する際には、アップデートの頻度や内容をしっかりと調べておきましょう。公式サイトやバージョン管理システムなどに情報が掲載されているので、チェックしておくのをおすすめします。
セキュリティ対策を行っているか
アプリでは、ユーザーの個人情報をはじめとした重要なデータを取り扱っています。情報が漏洩してしまった場合、ユーザーからの信頼を失ったり、法的な制裁を受けたりする可能性があるため、万全なセキュリティ対策が不可欠です。
フレームワークそのものにセキュリティの欠陥がないか、問題が発見された際に速やかにアップデートが行われているかなど、事前に確認しておきましょう。
まとめ
フレームワークをうまく活用できれば、アプリの開発効率を大幅に向上できます。しかし、開発チームのスキルによっては学習時間やコストが必要だったり、自由度が制限されたりするデメリットも存在します。
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