アパレルショップがアプリを活用するには?導入のメリットや方法を解説

アパレル業界では近年、店舗アプリが注目され、導入するアパレルショップが増加中と言われます。ここではその背景である、アパレルショップが直面している経営課題と、その解決ツールとしての店舗アプリ導入のメリット、導入方法などを解説します。

アパレル業界で店舗アプリが注目されている背景

アパレル ハンガーにかかった商品

アパレル業界で店舗アプリが注目されている背景を見ていきましょう。

例えば経済産業省が2022年8月に公表した『電子商取引に関する市場調査結果』によれば、「物販系分野」における「衣類・服装雑貨等」の市場規模は、2020年が2兆2203億円(前年比16.3%増・EC化率19.4%)、2021年が2兆4279億円(前年比9.4%増・EC化率21.2%)などとなっています。

アパレル市場におけるEC化率(市場全体の売上規模に対するECの売上規模の割合)もついに20%の大台に乗り、今後もECサイトでアパレル製品を購入する消費者の増加が予測されています。そうした中でアパレル製品購入に関する消費行動の変化が指摘されています。

その典型が一部の消費者に見られる「ショールーミング」の定着です。ショールーミングは、消費者が商品購入前に実店舗で商品の実物を確認した上で、購入をオンラインで済ませる手法のことです。ターゲットにされたアパレルショップは、「アパレル製品の無料展示場と化し、もはや事業の体を成さない可能性がある」とも言われています。

これからアパレルショップが残るためには、さらに集客力を強め、リピーターの増加とロイヤルカスタマーの育成に努める必要がパレルショップの多くは次の経営課題に直面していると言われています。

(1)実質セルフサービス営業の常態化

顧客満足度の高い接客サービスをするには、来店客からアパレルの好みの色や柄、デザイン、その他製品選びの参考となる情報をさりげなく聞き出す必要があります。その上で客が求めている製品を察知し、製品選択と着こなしのアドバイス、コーディネート提案、試着のサポートなどをする必要があります。

ところが近年のアパレルショップは人件費抑制の関係もあり、こうした接客スキルを持った店員育成の余裕がなくなっています。そして店員の多くは製品への値札タグ付け・バーコード貼り付け、陳列品の整理・整頓など雑多な製品陳列業務と店頭在庫管理に忙殺されているのが現状です。

その結果、本来は接客サービスを行う形の営業形態でも、店員に時間的余裕がなく、来店客が自由に選んだ製品を店員がレジで精算する「実質セルフサービス営業」が常態化している店が増加しています。こうした店では来店客の製品購入満足感が低く、店に対する印象も薄いので、従来に比べ再来店の可能性が低いと言われています。

(2)アナログベースの顧客フォローが少なくない

アパレルショップのリピーターを増やすためには、顧客フォローが欠かせません。アパレルショップの顧客フォローと言えば、DM送付、電話による新製品や販売キャンペーン・フェアの案内などが定番です。

しかしデジタル時代の現在、こうしたアナログベースのフォローが受け入れられにくくなっています。DMは開封されず、電話はユーザーから迷惑がられるなど、顧客フォローとしての効果はなく、コストだけがかかっています。

アナログベースの顧客フォローを見直す時代が来ているのです。

(3)ロイヤルカスタマー育成の壁

アパレル業界は競合店が多いので、自店の売上を安定的に伸ばすためには、リピーターの増加とロイヤルカスタマー育成を図る必要があります。そのため、たとえば「リピーターやロイヤルカスタマーには製品購入回数や累積購入金額に応じた特別割引等の特典を付与する、フェア等への招待と会場でのVIP接遇を行う」などの販促策が必要になります。

ここで壁になるのが、顧客情報の管理と分別です。従来のアナログベースで行っている店の場合は、紙の顧客管理表に記録した製品購入回数や購入金額を電卓で一人一人確認してからリピーターとロイヤルカスタマーを分別し、その上で特典付与、招待状発送などを行う必要があり、このために大変な手間とコストがかかります。

特に従業員に余裕がない状態で店舗運営をしているアパレルショップの場合は、この作業は難しくなります。

アパレルショップを運営する上で知っておきたい店舗アプリの基本

アパレル 棚に置かれた商品

店舗アプリとは、アパレルショップを始めとする店舗の販促に特化した機能を搭載したスマートフォンアプリのことです。ユーザーはアプリを自分のスマホにインストールすることで、店舗の情報を確認できたり、クーポンやポイントなどのお得なサービスを受けたりできます。

関連ページ:店舗アプリとは?導入のメリット、機能を解説【初心者向け】

店舗アプリの主な機能

小売業の業種・業態により、必要となる店舗アプリの機能は様々ですが、小売業共通の主な機能として、一般に次が挙げられます。

(1)会員証・ポイントカード発行機能

顧客一人一人に発行する会員証やポイントカードは、顧客の属性や購買履歴を把握する重要ツールの1つです。QRコードやバーコードによるポイント発行やポイント利用をレジ精算と共に可能とするアプリもあります。

関連ページ:ポイントカードアプリの3つの作成方法!どのような店舗が導入すべき?

(2)デジタルクーポン発行機能

新製品販売キャンペーンや重点製品販売フェアを実施する場合、来店した顧客に特典としてデジタルクーポンを発行できます。ランク付けした顧客のランク別クーポン発行も可能です。

関連ページ:クーポンで効果的に集客。リピートしたくなる内容やタイミングは?

(3)プッシュ通知配信機能

スマホのプッシュ通知機能を活用し、顧客に新着情報を配信できます。プッシュ通知は顧客が内容を確認する頻度が高いので、従来のDMと異なり自店の情報伝達度が高まります。

関連ページ:アプリのプッシュ通知とは?主な種類や配信方法、効果を高めるコツを徹底解説

(4)顧客情報分析機能

店舗アプリに記録された来店日、購入製品・金額、ポイント発行数などのデータに基づく顧客別の購買行動特性の分析が可能です。これにより顧客個別のニーズに適した製品案内の精度を高められます。

店舗アプリ導入のメリット

店舗アプリ導入のメリットとして、一般に次が挙げられます。

(1)顧客との接点確保と維持が可能

デジタルクーポン発行、プッシュ通知を活用した各種キャンペーン・フェア情報の配信などにより、既存顧客との接点確保と維持、そして信頼関係の構築が可能です。

(2)ロイヤルカスタマーの育成が可能

リピーターをランク付けし、上位リピーターに対し、店舗アプリを活用した様々な特典付与を始めとする「VIP販促活動」をすることにより、自店に愛着を持つロイヤルカスタマーの育成ができます。これにより一定割合の安定的で継続的な売上確保の見通しを付けられます。

(3)顧客と現場情報の収集と活用による業務改善

店舗アプリの中には、顧客情報だけではなく自店の現場情報の収集・分析ができるものもあります。

例えば、自店の情報収集・分析目的に則した機能設計により、
 現場の業務データ収集・分析による店舗運営業務の省力化・効率化が可能になり、店員は接客サービスに充てる時間の増加が可能
 顧客アンケートの集計・分析に基づく仕入製品の見直し
 顧客の購入履歴の分析と活用
などが可能です。

特に顧客の購入履歴の分析と活用においては、
 どのような種類のクーポンが顧客に喜ばれるのか
 どのキャンペーンが成功し、失敗したのか、その要因は何か
などの分析も可能です。

関連ページ:お店アプリで集客につなげる方法は?業種ごとに解説

アパレルショップにおける店舗アプリの導入方法

ノートパソコン PCデスク

店舗アプリの導入においては、多くの店が既製のパッケージアプリを選んでいます。他に自社開発アプリ、自社向けにカスタマイズしたパッケージアプリという選択肢も存在。そのため小売業の業種・業態、自店の経営課題など、状況にあわせ選択することになります。

店舗アプリの導入方法の違いと、それぞれのメリット・デメリット

店舗アプリの導入方法は、基本的に次の3タイプに分類できます。

関連ページ:【店舗運営者向け】アプリは自社で開発すべき?基礎知識を解説

(1)自社開発アプリ導入型

自社でアプリの仕様や機能を決め、それに基づくアプリ開発をベンダに依頼し、自店に導入するタイプとなります。特に大規模チェーン店に多いです。

<メリット>
・競合他社の店舗アプリと差別化できる
・自社チェーン店の実情に即した接客サービス、顧客フォロー、ロイヤルカスタマー育成向けの機能を営業現場へ提供できる

<デメリット>
・店舗アプリの開発や運用、保守コストの負担が重い
・店舗アプリの最新技術を迅速に取り入れるのが難しい

(2)パッケージアプリ導入型

パッケージアプリの一部を自社向けにカスタマイズして導入するタイプです。小規模チェーン店や個店に多いと言われています。

<メリット>
・導入コストが安い
・短期間での導入や運用が可能

<デメリット>
・競合他社の店舗アプリと差別化できない
・アプリ機能に対する自社の営業現場の細かいニーズを反映しにくい

(3)自社開発アプリ+パッケージアプリ導入型

自社開発アプリとパッケージアプリを融合した形の店舗アプリを導入するタイプです。中規模チェーン店に多いと言われています。

<メリット>
・自社開発アプリの独自性とパッケージアプリの汎用性の良いとこ取りをした店舗アプリを導入できる
・自社の営業現場の細かいニーズを反映したアプリの中核機能は自社開発、周辺機能はパッケージと、店舗アプリの設計の切り分けができる
・自社開発アプリより開発や運用、保守コストの負担が軽く、しかもパッケージアプリより使い勝手の良い店舗アプリを導入できる

<デメリット>
・障害が発生した時の切り分けが難しく、責任の所在も不明確なので、障害復旧に時間がかかるケースがある

店舗アプリを導入する際に注意すべきこと

店舗アプリを導入する際の注意点として、一般に次の2つが挙げられます。

(1)導入目的を明確にする

店舗アプリの導入に際しては、導入目的の明確化が何よりも重要です。これが不明確だと、苦労して導入しても期待した成果を得られないからです。

そのためには、自店の経営課題解決を具体的に数値化した店員の接客サービス時間数、リピーター獲得数、月間と年間の売上額などの目標を設定し、店舗アプリはそれを達成するためのツールと位置付けると、現場の店員も取り組みやすいでしょう。

(2)アプリの運用・保守体制を整備する

店舗アプリの導入に際しては、その運用・保守体制の整備も不可欠です。

たとえば、iOSやAndroidのメジャーアップデートがあった時は、直ちにそのOSと自社提供アプリのインタフェースや整合性に不具合がないかをテストで確認します。その上で顧客のスマホにメジャーアップデートの悪影響が発生しないよう、万全の注意を払う必要があります。

もし顧客のスマホに悪影響が出る事態になると、顧客は即刻店舗アプリをアンインストールしてしまうので、その時点で顧客との接点が消滅してしまうでしょう。専任エンジニア配置を含めた運用・保守体制の整備は、店舗アプリ導入目的の成否を左右する重みを持っています。

関連ページ:店舗アプリ作成の流れは?作成のポイントを徹底解説!

まとめ

スマートフォン アプリイメージ

店舗アプリは、様々な経営課題に直面しているアパレルショップが、顧客との関係をデジタルで再構築することで地域における存在感を取り戻し、地域経済の発展の一翼を担う事業者として活躍する上で、大きな可能性を秘めたITツールと言えます。

また販促ツールでもあるので、情報発信のフィードバックを通じて地域のアパレルニーズの動向や消費者の購買行動の変化も容易になるでしょう。

その意味でアパレルショップの経営課題解決の第一歩は、店舗アプリ導入からと言えるかも知れません。

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