アプリ開発期間の目安は?延びてしまう理由や対策方法を解説

リピーターの獲得やブランド力の向上といった理由から、自社でアプリ開発に取り組む企業が増えています。競争優位性を確保するためには、なるべくスピーディーにアプリを完成させ、市場へリリースすることが重要です。

そのためには、アプリ開発にどれくらいの期間がかかるのかをあらかじめ把握しておく必要があります。開発期間はアプリのジャンルや規模によって大きく異なり、とくに開発経験がない企業にとっては、見通しを立てにくいのが実情です。

一般的に、アプリの開発には平均で4〜6ヶ月程度かかるとされていますが、要件定義の不備や途中の仕様変更、予期せぬトラブルなどにより、スケジュールが延びるケースも少なくありません。

本記事では、アプリ開発の期間の目安や、遅延が起きる原因をご紹介。さらに、開発を上手く進めるためのポイントについても解説します。

アプリの開発期間は、ジャンルによって大きく異なります。​ジャンルごとの開発期間の目安は、以下の通りです。

ジャンル開発期間の目安特徴や注意点
店舗・企業公式アプリ約3~6か月商品情報や店舗情報の提供、クーポン配信、予約機能などが主な機能。
比較的シンプルな構成で、開発期間は短め。
学習系アプリ約3~6か月教材の提供、進捗管理、クイズ機能などを備える。
コンテンツの質とユーザーインターフェースの使いやすさが重要。
業務管理アプリ約3~9か月在庫管理、勤怠管理、顧客管理など、業務効率化を目的とした機能を搭載。
システムの複雑さにより、開発期間が延びることがある。
位置情報系アプリ約3~9か月GPS機能を活用した地図表示やナビゲーション、周辺情報の提供などが主な機能。
リアルタイム性や精度が求められる。
SNSアプリ約6か月~1年以上ユーザー間のコミュニケーション機能、投稿・コメント・通知機能など、多機能で複雑な構成。
セキュリティの確保が重要。
EC(電子商取引)アプリ約6か月~1年以上商品の閲覧・検索、カート機能、決済機能、注文管理などを備える。
セキュリティ対策や決済システムの導入に時間を要する。
ゲームアプリ6か月~1年以上ゲームロジック、グラフィック、サウンド、ランキング機能など、多岐にわたる要素を含む。
ゲームの規模や複雑さにより、開発期間が大きく変動する。
金融系アプリ約1年以上口座管理、送金、投資機能など、高度なセキュリティと正確性が求められる。
法規制への対応やセキュリティ対策により、開発期間が長期化する傾向。

たとえば、金融系アプリはユーザーの口座やクレジットカードなど、極めて重要な情報を扱います。高度なセキュリティやプライバシーを確保する必要があり、開発期間は長くなる傾向にあります。

一方で、店舗や企業の公式アプリなど比較的シンプルな機能で構成されるアプリは、開発期間が短く済むことが多いです。​開発計画を立てる際は、ジャンルごとの特性や必要な機能を踏まえ、現実的なスケジュールを立てることを心がけましょう。

アプリ開発の期間は、さまざまな要素によって決まります。続いては、特に影響を与えやすい3つのポイントについて解説しましょう。

搭載する機能の数や内容によって、開発にかかる時間は大きく変わります。

たとえば、SNS連携・決済機能・ログイン機能など複雑な仕組みが必要なアプリは、開発に半年以上、場合によっては1年以上かかることも珍しくありません。一方で、問い合わせフォームやカレンダーなど、最低限の情報だけを表示するシンプルなアプリであれば、2~3か月ほどでリリースできることもあります。

また、高機能なアプリは、搭載される機能が多い上に、内部構造が複雑であるためテスト項目も増えやすいです。搭載された機能の数に比例し、不具合(バグ)やセキュリティ対策に多くの時間が必要になります。機能を詰め込みすぎると開発が長引く原因になるため、実装したい機能に優先順位をつけることが大切です。

アプリの開発手法を大きく分けると、以下の2種類があります。

  • ウォーターフォール開発
  • アジャイル開発

ウォーターフォール開発」とは、工程を1つずつ完了してから進み、原則として前の工程には戻らない手法です。搭載する機能やシステムをすべて決めてからスタートするため、計画通りに進めやすく、品質を担保しやすいという特徴があります。

シンプルな機能であれば3~4か月ほどでリリースできる場合もありますが、機能が複雑になるほど開発期間が長期化しやすく、完了まで1年以上かかることも。また、実装段階で機能の追加やデータ連携先の変更などが発生すると、初期の工程に戻る必要があるため、スケジュールに大きな影響を与えることがあります。

アジャイル開発」とは計画・設計・実装・テストといった工程を、小さいサイクルで繰り返す手法です。優先度の高い部分から着手できるため、従来の手法と比べて開発期間の短縮が期待できます。開発期間の目安は2~3か月ほどで、大規模なアプリでも6か月程度を目安に開発できるとされています。

ただし、実際の開発期間はアプリの種類や規模、チーム体制によって大きく変動するため、この限りではありません。また、アジャイル開発は、細かな単位で作業を進めていくため方向性がぶれやすく、品質の管理が難しいため、開発者のスキルが結果に大きく影響します。

まとめると、アジャイル開発は変化に強くスピード重視のプロジェクトに、ウォーターフォール開発は要件が明確で計画通りに進めたいプロジェクトにそれぞれ適しています。どちらの手法も万能ではなく、プロジェクトの特性や目的に応じて選択することが重要です。

誰がどのようにアプリを作るのかも、スケジュールに大きな影響を与えます。開発体制には、以下の3つのパターンがあります。

  • 自社対応
  • 外部委託
  • 自社対応と外注を併用

自社対応は、社員同士のコミュニケーションが取りやすいため、修正対応もスムーズに行えます。社内でスキルがある場合は、コストを抑えながら短期間での開発も可能です。ただし、リソースやスキルが不足していると、かえって時間が必要なケースも。

外部委託は、専門的な技術や知識を生かして、高品質なアプリが期待できます。ノウハウが確立されているため、開発スピードも速い傾向にあります。ただし、自社の意図が上手く伝わらなかったり、不具合への対応が遅れたりすると、開発期間も延びやすくなる点がデメリットです。

自社対応と外注の併用は、要件定義や企画を社内で行い、開発作業を外注する方法です。社内の弱い部分を補完できるので、バランスよく進行できます。なお、委託先との連携が不十分だと、修正や機能の追加などに手間取るケースがあるため、密なコミュニケーションが重要です。

関連ページ:【店舗運営者向け】アプリは自社で開発すべき?基礎知識を解

アプリ開発のスケジュールが予定よりも延びてしまうことは珍しくありません。​原因を事前に把握し、適切な対策を講じることで、開発期間の遅延を最小限に抑えましょう。ここでは、開発期間が延びる主な原因と、対策について解説します。

要件定義とは、システムの設計を進める前に、アプリ開発の目的を明確にすることです。アプリで何をしたいのか、どのような機能が必要なのかを決めていきます。

定義が曖昧なままプロジェクトが進むと、大幅な変更や作り直しが必要になる可能性もあります。外部に開発を依頼する場合は、委託先にもしっかりと情報を共有しましょう。

特に大切なのが、以下の通りです。

  • だれが見てもわかりやすく書く
  • 細部まで詰める
  • 搭載したい機能の優先順位をつける

要件定義書は誰が見てもわかりやすく、できるだけ詳細に書くようにしましょう。アプリ開発に携わる多くの人が見るものです。それぞれ専門分野が違うので、どの分野の人にもわかりやすいものでないと、認識のズレが起こる可能性があります。専門用語には注釈を入れる、必要に応じて図を入れるなど、誰が見てもわかりやすい内容に心がけましょう。

搭載したい機能の優先順位をつけることも意識しましょう。なぜなら、希望した機能をすべて実装出るとは限らないからです。優先順位をつけておけば、開発側が予算やスケジュールに合わせて柔軟に対応できます。

ただし、要件定義にばかり時間をかけてしまうと、そのあとのスケジュールが圧迫される可能性があります。作成期間は、開発工程全体の20~25%ほどが目安です。仮に6か月間でアプリを制作したいなら、1か月ほどで要件定義を定めましょう。

開発期間が長引く理由の一つに、完成したアプリが想定したものとは異なってしまうことがあります。原因を特定したうえで、修正や調整をしなければならないため、公開予定時期よりも遅延が発生する可能性が高いです。

原因としては、要件定義に不備があったり、企画部と開発部の認識が違かったりすることなどが考えられます。要件定義をきちんと定めるとともに、関係者全員で情報を正確に共有することが重要です。

また、外部に委託する場合は、過去の実績や開発期間の目安をきちんと確認するようにしましょう。

アプリ開発会社ごとに、得意とする分野は変わってきます。たとえば、ゲームアプリを得意とする会社もあれば、店舗向けアプリに強い会社もあります。開発したいアプリのジャンルに対して、十分な知見や経験を持つ会社を選ぶことで、完成後のギャップやトラブルを未然に防げるため、スムーズな開発につながるでしょう。

開発中に不具合やバグが発生すると、その対応に時間を取られます。無理のない納期を設定していても、予期せぬトラブルによって遅延が発生することは少なくありません。

特に、開発後期になってから不具合が見つかると、その影響は非常に大きくなります。すでにほとんどの機能が組み上がっており、広範囲まで修正が及ぶ可能性があるためです。

こうした事態を防ぐには、早い段階から継続的なテストを行い、できるだけ早くバグを発見・修正することが重要です。

代表的な方法として、次の3つが挙げられます。

  • 静的コード解析
    ソースコードを実行せずに構造やロジックを分析し、潜在的な問題や脆弱性を早期に特定する手法。品質向上や保守性の確保に有効ですが、誤検知が発生する可能性もあるため、結果の精査が必要です。
  • 動的テスト
    ソフトウェアを実際に動かしながら、ユニットテストや統合テストなどを通じて、実行時に発生するバグを検出します。実際の動作を検証できる点が強みですが、全てのパターンを網羅することは困難です。
  • 機械学習を活用したバグ検出
    過去のバグデータをもとに学習したモデルを活用し、異常やパターンを自動で検出する手法。大規模開発における効率化や、検出精度の向上に効果を発揮します。

これらの手法を適切に組み合わせることで、開発現場の負担を軽減しつつ、高精度なバグ検出が可能になります。さらに、コードレビューを習慣化し、第三者の視点から設計ミスや、見落としを早期に発見するのも良いでしょう。

Webアプリはブラウザ上で動作するため、自由な開発ができる上に審査も不要です。そのため、リリースまでの期間が比較的短いという特徴があります。

しかし、スマホアプリの場合、iOSアプリならApple、AndroidならGoogleの審査を受ける必要があります。審査をクリアできなければ、不備のある箇所の修正や作り直しをしなければなりません。原因が明らかでない場合は、それを探すところから始めるため、予定していたリリース時期に間に合わなくなる可能性もあります。

なお、AppleとGoogleは、アプリのガイドラインを開示しています。このガイドラインに違反すると審査が通らないため、どのような内容なのか、正確に把握しておきましょう。

参考:Google Play デベロッパーポリシーセンター
参考:App Reviewガイドライン

アプリ開発期間が長引いていくほど、たくさんのデメリットが発生します。ここからは、代表的なものを解説しましょう。

  • サーバー費用
  • テスト費用
  • 運用・保守費用

開発期間が長引くほど、これらのコストは増大していきます。当初の予定よりも制作が長引いた結果、予算が足りなくなり、開発自体を断念せざるを得なくなることも。スケジュールの遅延を防ぎ、予定通りに進めることが、アプリのリリースを成功させるカギです。

アプリのトレンドは移り変わりが非常に早いため、リリースが少し遅れただけでも、ユーザーの興味や嗜好が大きく変わってしまうことがあります。また、競合他社が自社と似たような機能をもつアプリを先に公開した場合、ユーザーから選ばれにくくなるリスクも高まります。

さらに、アプリ開発の技術は常に進化しているので、搭載されている機能が時代遅れだと判断されてしまうことも。公開時期が遅れても、独自のサービスを提供できれば優位性を確保できる場合もありますが、可能な限り早くリリースするのが重要です。

開発期間が長引いてアプリの公開が遅れると、マーケティング活動における機会を損失する可能性があります。

たとえば、アプリを通じて自社の新商品やサービスをPRしようと計画していた場合、リリースが遅れることで、その間に得られるはずだった利益を獲得できません。

さらに、アプリ導入による顧客接点の機会も喪失します。結果として、競合他社に市場を奪われるリスクも出てくるでしょう。こうした影響を抑えるためには、開発チームとマーケティング部門が密に連携し、リリース時期を見据えた柔軟な対応を取ることが重要です。

アプリ開発に時間がかかり過ぎると、コストの増大やユーザー獲得機会の損失など、さまざまな不利益が生まれます。これを防ぐには、計画段階から遅延の原因を把握し、適切な対策を講じることが重要です。以下に、開発期間を延ばさないための具体的なポイントをまとめました。

搭載予定の機能や開発手法に応じて、適切なスケジュールを設定することが大切です。

アプリ開発は複雑なプロセスを伴うため、さまざまな要因によってスケジュールが影響を受けます。システムに不具合が発生したり、リソースが不足したりすることで、計画通りに進行できないことがあります。

特に、大規模なアプリ開発や新しい技術の導入は、不確定要素が多く、スケジュール管理が困難になる可能性もあります。技術的な問題やトラブルが発生しても対応できるよう、余裕のあるスケジュールを組みましょう。

アプリ開発を順調に進めるためには、進捗管理が欠かせません。「誰が」「どの作業を」「どこまで進めているか」をチーム全体で把握できていないと、作業の遅れや抜け漏れに気づけず、納期に間に合わない原因になります。

まず取り組みたいのが、進捗の「見える化」。GoogleスプレッドシートやExcelを使って、タスクや担当者、期限、進捗状況をまとめて管理する方法は、手軽で導入しやすいためおすすめです。クラウドで共有すれば、チーム全員がいつでも最新の状況を把握できます。さらに、色分けやチェックリストを活用することで、完了・未完了が一目で分かる状態に。情報の伝達ミスも防げます。

定期的な進捗の共有も行いましょう、定期的にミーティングを設けておけば、進捗の確認だけでなく、遅延やトラブルの早期発見にもつながります。問題が小さいうちに対処できるため、手戻りのリスクも軽減できるでしょう。「見える化」と「こまめな共有」の2つを徹底するだけで開発はスムーズに進みやすくなるので、取り入れてみると良いでしょう。

予期せぬトラブルが発生した場合に備え、予備の人員や技術サポート体制を整えておくことが重要です。作業負荷が急に増大しても、予備のリソースがあれば、チーム全体の負荷を軽減し、遅延リスクを最小限に抑えられます。

リソースを確保するには、外部委託、一時的な人材雇用(派遣や業務委託)、組織体制の強化などがあります。開発を始める前に、これらのコストも予算に組み込んだうえで、適切な体制を整えておきましょう。

アプリの開発期間に影響を与えるのは、開発体制やスケジュール管理など、さまざまな要素があります。

スケジュールに遅れが出ると余剰コストが発生するほか、市場で競争性を損なう可能性も。遅延を発生させないためには、要件定義をきちんと固める、予備のリソースを確保するなど、適切な対策を講じましょう。

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