近年、スマホやアプリの利用が日常に浸透しており、キャッシュレス化が進んでいます。こうした背景から、販売店舗や飲食店舗などを中心に、バーコード決済が幅広く導入されるようになりました。
実際に、現金を持たずスマホのみで買い物をする人の割合は年々増加しています。経済産業省の調査によると、2024年のキャッシュレス決済比率は、国内の支払額のうち42.8%(141.0兆円)にまで達していることが分かっています。
そこで今回は、バーコード決済の種類やメリット、デメリットをご紹介。導入を検討されている方の参考になれば幸いです。
参考:経済産業省 2024年 キャッシュレス決済算出結果概要
バーコード決済とは
バーコード決済とは、スマートフォンのアプリケーション上に表示されるバーコードを用いて、キャッシュレスで決済することです。
特徴は、財布や現金を持たずとも、スマホアプリを提示するだけでスピーディーに買い物をできること。現代社会においては、スマホやアプリが日常生活に浸透していることから、幅広いジャンルの店舗でバーコード決済が導入されています。
バーコード決済とQRコード決済の違いは?
バーコード決済とよく似ているのが、QRコード決済です。両者の違いは、読み取るものがバーコードか、QRコードかという点です。
バーコードとは、数字や文字列を黒い縦のバーとスペースで表現したデータコードのことです。20字ほどのアルファベットや数字を記録できますが、複雑なデータは保存できません。その分高速でデータを読み取れるため、スーパーやコンビニなど、大量の顧客を処理する店舗で適しています。
そして、QRコードとは縦方向だけでなく横方向に黒いバーやスペースを組み合わせたデータコードのこと。バーコードの約200倍ものデータを記録できるのが特徴です。レジでの決済はもちろん、チケット発券、商品管理、SNSでの情報交換など、さまざまな用途がありますが、情報量が多い分、処理スピードに時間がかかるケースがあります。
バーコード決済の種類
バーコードを用いた決済方法を大きく分けると、ストアスキャン方式とユーザースキャン方式と呼ばれる2つのパターンが存在します。以下にそれぞれの特徴を解説しましょう。
ストアスキャン方式
ストアスキャン方式とは、消費者ごとに割り振られたコードを店舗側がスキャンして決済を行う方式のことです。
まず、消費者はレジでスマートフォンから店舗アプリやキャッシュレスアプリを起動し、コードの表示画面を店員に提示します。店員がそのコードを専用の読み取り機でスキャンすると、消費者のアカウントと店舗の決済システムが連携します。その後、店舗側のシステムで支払い金額を入力し、決済が完了するという流れです。
ストアスキャン方式の場合、コードのスキャンや支払い金額の入力作業は店舗側が行います。コードを提示するだけで支払いが完了するため、消費者の負担を軽減できるのが特徴です。
店員が消費者のコードを目視で確認しスキャンするため、セキュリティ面でも安全性が高いと考えられます。ただし、店舗側はコードを読み取るための専用機材を導入する必要があり、初期費用がかかるという側面もあります。
ユーザースキャン方式
ユーザースキャン方式とは、店舗の情報が埋め込まれたコードを消費者がスキャンすることで決済を行う方式のことです。
まず、店舗側は専用のコードを事前に用意しておきます。買い物をする際に、従業員はレジでコードを提示し、消費者はスマートフォンなどで店舗アプリやキャッシュレスアプリを起動し、提示されたコードを読み取ります。
すると、アプリのアカウントと店舗の決済システムが連携し、キャッシュレス決済が可能に。その後、消費者が支払い金額を自身の端末に入力することで決済が完了します。
この方式では店舗側のコードを消費者の端末で読み込むため、店舗側が専用の読み取り機材を用意する必要がなく、比較的安価にシステムを導入できるのが特徴です。ただし、消費者が店舗コードを読み込み、支払い金額を入力する工程が発生するため、作業負担は大きくなります。
バーコード決済を導入するメリット
バーコード決済を導入すると、企業にはさまざまなメリットがもたらされます。以下に、代表的なものを紹介しましょう。
従業員の負担が軽減する
バーコード決済を導入すると、現金のやりとりを行う必要がありません。現金の数え間違いや釣銭の受け渡しミスなどを防止できるほか、決済にかかる時間を大幅に短縮できます。
売上はデータ上で管理するため、レジを閉める作業も短時間で済むでしょう。
また、支払い時間が短縮されるため、レジの混雑緩和にもつながります。従業員の心身の負担を軽減できるほか、接客やそのほかの業務に充てる時間も確保できます。
売上のデータ化ができる
バーコード決済を導入すると、支払い履歴が自動的に記録されます。従業員が現金を数える必要がなくなるうえ、売上管理が容易になるのが大きなメリットです。
さらに、購入された商品や金額の履歴は自動的にデータ化されます。売れ筋商品を特定したり、来客の少ない時間帯を特定してクーポンやキャンペーンを実施したりすることが可能です。返品が多い商品があれば、改善策も講じられるでしょう。
手作業で集計するよりも正確かつ短時間で売上を分析できるため、バーコード決済の導入は経営戦略の面で大きなメリットをもたらします。
集客や顧客の育成につながる
バーコード決済アプリがあれば、顧客情報の収集だけでなく既存顧客や新規顧客の育成が可能です。
たとえば、アプリのプッシュ通知を利用すれば、企業が発信したメッセージをスマホの画面上で顧客に確認してもらえます。また、プッシュ通知で再来店を促進できればリピーター率の改善や優良顧客の育成につなげられる場合があります。定期的に商品やサービスを購入してくれる顧客がいれば、収益を安定できるでしょう。
また、決済アプリによっては、さまざまな機能を付随させることができます。たとえば、支払った金額の一部を還元したり、ポイントが溜まったりといったサービスの実施が可能です。こうした機能によって満足度が高まれば、リピーターを増やせるほか、新規顧客の獲得も期待できます。
関連ページ:アプリのプッシュ通知とは?主な種類や配信方法、効果を高めるコツを徹底解説
ペーパーレス化の実現
バーコード決済を導入すると、ペーパーレス化を実現できるメリットもあります。ペーパーレス化とは、紙媒体を電子化してデータとして保存・保管することです。環境問題の観点から、国としてもペーパーレス化を推奨しています。
たとえば、紙のポイントカードは顧客数が増えれば増えるほどペーパー代や印刷コストが発生します。もし顧客が紛失してしまった場合、従業員がポイントカードを再発行しなければなりません。バーコード決済を利用すれば、ポイントカードを発行する必要がなくなるため、コスト削減や業務の効率化にもつながります。
バーコード決済を導入するデメリットは?
バーコード決済アプリの導入は、企業にとって大きなメリットがあります。しかし、導入前に考慮すべきデメリットがあるのも事実です。主なデメリットには、次のようなものが挙げられます。
機能別の費用相場
バーコード決済は、リアルタイムで決済サーバーと接続して承認を得るため、通信環境がとても重要です。ネットワーク接続が不安定だと、次のようなトラブルが起きる可能性があります。
- バーコードが正しく表示できない
- 決済完了のレスポンスが返ってこず、会計が滞る
- 決済データがタイムアウトでエラーになる
バーコード決済のメリットは、スムーズな会計の実現によって、従業員の負担の軽減や顧客満足度が向上することです。しかし、上記のようなトラブルが発生すると、かえってレジの混雑を招き、売上の機会を損失する可能性があります。
ランニングコストがかかる
バーコード決済は、導入に関する初期費用は安価な場合がほとんどです。しかし、運用フェーズにおいては、以下のようなランニングコストが発生します。
コストの種類 | 金額の目安 |
---|---|
決済手数料 | 決済金額の1~3% |
振込手数料 | 決済金額の0.5~3% |
月額利用料 | 月額2,000~5,000円 |
端末利用料 | 月額3,000~10,000円 |
なかでも決済手数料は、利用する顧客が増えていくほど、金額が大きくなっていきます。長期的な運用を考えながら、複数のサービスを比較・検討することが重要です。
不正なコードを使われるリスクがある
バーコードはQRコードよりもシンプルなので、本物そっくりのものを簡単に複製できます。
特にユーザースキャン方式を採用する場合は、不正に作成したコードが使われる恐れも。たとえば、決済時に印刷したコードをレジ前などに置いて、消費者にスキャンしてもらうとします。このときコードがすり替えられていると、消費者の支払いが店舗とは別の第三者に送金されてしまいます。
また、消費者がコードをスキャンしたフリをして、別のコードをスキャンするケースも増加しています。決済を確実に完了させるためは、店舗側に万全な対策が求められるでしょう。
バーコード決済を導入するポイントは?
実店舗でバーコード決済をスムーズに導入するためには、いくつかのポイントがあります。ここでは代表的なものを紹介します。
顧客へ利用を促す仕組みをつくる
バーコード決済は、顧客にアプリをインストールしてもらわなければ利用できません。単にバーコード決済を導入して終わりではなく、顧客に利用を促す取り組みをおこなうことが必要です。
たとえば、店舗にバーコード決済に関する情報が掲載されたポップを置いたり、アプリのインストールでポイントを付与したりする方法もあります。顧客から問い合わせがあったときに従業員が答えられるように、従業員にもあらかじめ導入に関する情報を共有しましょう。
スタッフが仕組みを正しく理解する
はじめてバーコード決済を利用する顧客もいます。使い方がわからずに困惑する顧客に対応するには、店舗スタッフがバーコード決済の仕組みを正しく理解しておくことが必要です。
また、顧客のなかには、情報漏洩に関するリスクを心配する方もいるでしょう。このような不安を取り除くには、セキュリティ面に関してしっかり説明することも必要です。特に会計に携わる従業員には、決済の仕組みや利用の際の流れを伝えておくのが大切です。
不正への対策を行う
バーコード決済は、コードのすり替えによって、本来店舗に入金されるはずだった売上金が第三者の口座へ送金されてしまうリスクがあります。この不正を防ぐために、以下の3点を特に注意してください。
- 利用者の操作を確認する
- 決済完了の二重チェック
- 従業員のセキュリティリスクを徹底
まずは、利用者の操作をしっかり確認しましょう。ユーザースキャン方式では、利用者が金額を入力する場合があります。正しい金額が入力されているか、店舗側で必ず確認してください。
決済完了画面を提示された際も、不正されている可能性を考慮し、必ず店舗側の決済システムで決済が完了したことを確認するようにしましょう。決済完了通知だけでなく、売上履歴を必ずチェックしてください。
また、従業員へのセキュリティ教育も重要です。よくある不正の手口と対策を理解したうえで、全員が警戒心をもてるように教育を徹底しましょう。
まとめ
バーコード決済は、スピーディーな支払いを可能にし、2024年には国内決済の4割以上を占めるまで普及しました。導入のメリットとしては、従業員の負担軽減、売上のデータ化による経営分析の効率化、集客・顧客育成、ペーパーレス化などが挙げられます。一方で、通信環境への依存やランニングコストがかかること、不正なコードを使われるデメリットも存在します。
不正による被害を防ぐためには、利用者の入力金額や決済完了画面を鵜呑みにせず、必ず店舗側の決済システムで完了を確認することが重要です。バーコード決済の導入を検討している店舗運営者は、自社の環境に合った方式を選択したうえで、安全対策も忘れずに講じましょう。