近年、マーケティング分野において「パーソナライゼーション」が重要視されています。
パーソナライゼーションとは「人それぞれに合わせて最適化すること」ですが、具体的にどのようなものかイメージがつきづらい方も多いと思います。
そこで今回は、アプリのパーソナライゼーションについて概要を解説した後、重要性やメリットについて詳しく紹介していきます。
パーソナライゼーションの概要
アプリのパーソナライゼーションについて解説する前に、まずはパーソナライゼーションの概要を紹介しておきます。
パーソナライゼーションとは、製品やサービス、広告などのコンテンツを個々のユーザーの好みや行動、ニーズに合わせて調整するプロセスのことを指します。
例えば、動画サイトの広告などが分かりやすいのではないでしょうか。動画サイトを開いた際に表示される広告は、過去のインターネット検索履歴やショッピングサイトでの購買履歴などに基づいています。
よって、人それぞれ表示される広告内容は異なります。
広告やサービスをユーザーの行動履歴や好みに合わせてカスタマイズすることで、それぞれの嗜好に合ったものを提供することが可能になり、ユーザーにとってはよりネット検索やショッピングなどがしやすくなります。
また、企業にとっては売上の増加にもつながります。
スマホアプリのパーソナライゼーションとは?
パーソナライゼーションとは「広告やコンテンツを個々のユーザーに合わせて調整する」ことでしたが、アプリでおこなうとなると具体的にはどのようなものになるのでしょうか。
スマホアプリのパーソナライゼーションは、ユーザーの好み・ニーズに合わせて、提供するコンテンツや配信広告をカスタマイズすることです。
具体的には、次の2つのステップから成り立っています。
ユーザープロファイルの作成
はじめに、アプリ内でユーザーに関する情報を収集してプロファイルを作成します。
基本的には名前や年齢、性別、居住地などの個人情報が含まれますが、アプリ内での閲覧履歴や購買履歴などが収集される場合もあります。
名前や年齢といった個人情報は、アプリダウンロード時にユーザー側で入力してもらう方法が一般的です。また、他のSNSアカウントと紐づけて情報収集するという手法もあります。
関連コンテンツの推薦
年齢や性別、過去の閲覧履歴や購買履歴に基づいて、関心のありそうなコンテンツを配信します。
ユーザー側ではアプリの通知設定などを選択でき、不要な通知は制限することも可能です。
スマホアプリにおけるパーソナライゼーションは、利用する側にとってはより関心の高い情報を得られるため利便性の向上につながります。
一方、個人情報や閲覧履歴などを収集するため、プライバシーの保護やセキュリティ対策などを徹底しておく必要があります。
アプリのパーソナライゼーションはなぜ重要なのか?
近年さまざまな企業が自社サービスの提供のためにアプリを開発しており、ユーザーそれぞれにパーソナライズされたコンテンツや広告を配信しています。
これほどまでにパーソナライゼーションが重要視される理由としては
・アプリの利用頻度を上げるため
・ユーザー満足度の向上のため
・広告、収益効果の増大のため
この3つが挙げられます。
アプリの利用頻度を上げるため
スーパーやコンビニ、飲食店、アパレルなど、さまざまな業種の企業が公式アプリを配信しています。
こういった公式アプリの利用頻度の調査によると、「月に一回程度」と答えたユーザーが約32%と最も多いことが分かっています。
つまり、ダウンロードされたアプリであってもそれほど頻繁には利用されないということです。
ユーザーにアプリを開いてもらいサービスを利用してもらうために、好みやニーズに合わせてカスタマイズするパーソナライゼーションが重視されていると言えます。
ユーザー満足度の向上のため
アプリをパーソナライズすることで、ユーザーの興味関心に合った情報や機能を提供することが可能になります。
また、ユーザーの関心に合った情報を提供するということは、不必要な情報やコンテンツを制限することにもなります。
ニーズのない情報を制限することでより快適にアプリを利用できるため、ユーザー満足度の向上につながるでしょう。
広告、収益効果の増大のため
まったく無関係分野のコンテンツや広告を配信するよりも、過去の閲覧履歴や購入履歴に関連したコンテンツを配信したほうが、ユーザーに興味を持ってもらえる可能性は高まります。
ユーザーの関心に合ったコンテンツや広告を配信することで、より効果的なプロモーションを提供でき、収益増大にもつながります。

アプリのパーソナライゼーションにおけるメリット
続いて、アプリをパーソナライズするメリットついて解説していきます。
アプリの利用頻度向上、長期利用につながる
すでにアプリを利用しているユーザーには、より興味関心に近いコンテンツを提供することでアプリの利用頻度の向上につながります。
また、競合アプリと比べてよりユーザーのニーズに近い情報やコンテンツを提供できれば、長期的な利用も見込めるでしょう。
アプリの改善や新機能開発に役立つ
ユーザーの行動履歴の分析は、アプリのシステム改善や新機能の開発に役立つことがあります。
行動履歴を分析することで、ユーザー自身や企業側も気づいていないアプリの使いづらさなどが浮き彫りになることがあります。
こういった問題点をきちんと改善していくことで、ユーザー満足度の向上にもつながります。
潜在顧客の獲得につながる
既存顧客のデータを分析することによって、ユーザー自身も気づいていないニーズを掘り起こすことができます。
このように新たなニーズを発見し、それに合わせたサービスやコンテンツを提供することで潜在顧客(まだ自社サービスを知らない顧客)の獲得にもつながります。
アプリのパーソナライゼーションにおけるデメリット
スマホアプリのパーソナライゼーションは、ユーザーにとっても提供する企業側にとってもメリットしかなさそうに見えます。
しかし、アプリをパーソナライズする上では次のようなデメリットにも注意する必要があります。
提供する情報やコンテンツが偏る
ユーザーの興味関心に近い情報や広告を発信することは、アプリの利用頻度や収益の増加につながります。
一方で、ユーザーにとってはいつも似たような情報やコンテンツばかりを目にすることになるため、新しいものに触れる機会が減り、視野が狭くなってしまいます。
予測が外れる可能性がある
アプリをパーソナライズする過程では、ユーザーの行動履歴や購買履歴をもとにしてどのような情報や広告を提供するかという予測を立てます。
しかし、この予測はいつも当たるとは限りません。ときには、ユーザーの関心と全く異なるものを提供してしまう可能性も考慮しておく必要があります。
プライバシー上の懸念
最も懸念されるのがプライバシー保護の問題です。アプリをパーソナライズする上では、名前、年齢、性別、居住地、閲覧履歴や購買履歴といった情報を収集し、分析する必要があります。
しかし、こういった個人情報が収集・分析されることに対して快く思わない人もいるかもしれないため、収集する情報やどの程度詳細まで分析するかといったバランスの見極めが大切です。
アプリのパーソナライゼーションに必要な3つの情報
アプリのパーソナライゼーションをおこなうには、まずユーザーの情報を収集する必要があります。
情報といってもさまざまなものがありますが、ここでは特に重要な3つの情報について解説します。
デモグラフィック
デモグラフィックとは、ユーザーの年齢や性別、年収や職業に基づいて、それに関連した情報を提供することです。
デモグラフィック情報は、アプリをダウンロードした際にユーザーに入力してもらう方法が一般的ですが、他のSNSアカウントなどと紐づけて情報収集する方法もあります。
コンテキスト
コンテキストとは「背景情報」という意味で、アプリにおけるコンテキストとは次のような情報を指します。
「アプリを起動する頻度」「よく起動する時間帯」「位置情報」など、どのような状況下でアプリが使われているかといった情報はすべてコンテキストに含まれます。
たとえば、アプリがよく起動される時間帯に合わせてタイムセールを実施したり、ユーザーの位置情報に近い店舗の情報を提供したりするという活用ができます。
また、アプリはスマートフォンで使う人が多いですが、アプリの種類によってはタブレットで起動する人の方が多いこともあります。
タブレットで使う人が多い場合、タブレットでも見やすいレイアウトにするなどシステムの改善ができるでしょう。
ビヘイビアー
ビヘイビアーとは「行動」や「態度」といった意味を持つ語ですが、アプリのパーソナライゼーションにおいては「ユーザーの行動履歴」といった意味合いを持ちます。
たとえばショッピングアプリにおいて、半袖トップスの閲覧履歴が多いユーザーには他の半袖トップスに関するコンテンツやクーポンを配信するというふうに活用できます。
ビヘイビアー情報をもとにコンテンツをパーソナライズすることで、より効果的なプロモーションにつながります。
アプリをパーソナライズする具体的な流れ
続いて、アプリをパーソナライズする具体的な流れについて順を追って解説していきます。
ユーザープロファイルの作成
ユーザープロファイルとは、特定のユーザーに紐づいた情報やデータなどをひとまとめにしたものです。
アプリをダウンロードした際、まずは個別にアカウントを作成してもらう場合が多いと思います。このアカウントをもとにプロファイルを構築していきます。
年齢、性別、居住地など、どんな情報をプロファイルに含めるかといったこともこの時点である程度決めておきましょう。
データの収集・分析
アプリユーザーの行動データを収集して分析します。行動データには、アプリを開く頻度や時間帯、購買履歴等が含まれます。
一人ひとりに紐づいたデータを個別に分析することで、ユーザー自身も気づいていない潜在的ニーズを掘り起こせることもあります。
情報提供システムの導入
ユーザーの興味関心に基づいて、プロモーションやおすすめコンテンツを表示するシステムを導入します。
AIなどを導入し、ユーザーの行動パターンなどを学習させていくというのも一つの手です。
また、アプリダウンロード時にユーザー自身に関心のあるカテゴリを選んでもらう、通知の有無を設定してもらうといったことも可能です。
キャンペーンや個別プロモーションの実施
特定のユーザーのみに向けてキャンペーンやプロモーションを実施することも効果的です。
たとえばショッピングアプリの場合、久しぶりにアプリを起動したユーザー向けにクーポンを配信して購買を促進するといったことです。
カフェのアプリの場合、「いつもコーヒーを購入しているユーザーに向けてスイーツ購入のプロモーションを実施する」という施策も考えられます。
このように一人ひとりに合わせた情報を提供することで、ユーザー満足度もより上がるでしょう。
プライバシー保護
ユーザーから収集したデータは、細心の注意を払って分析・管理していくことが大切です。
個人情報を収集・分析することに対しては、プライバシーポリシーなどを策定してあらかじめユーザーの同意を得ておく必要があります。
場合によっては、ユーザーに提供してもよい情報、提供したくない情報を事前に選択してもらう方法もあります。
また、収集したデータが外部に流出しないようセキュリティ対策も万全にしておきましょう。
まとめ
今回は、近年マーケティングにおいて重視されている「パーソナライゼーション」について、特にスマホアプリをパーソナライズする重要性やメリット・デメリット、具体的な流れについて詳しく解説しました。
多くのスマホアプリの中から選んで使ってもらうためには、ユーザーそれぞれに合わせた情報やプロモーションを提供することがとても重要になります。
一方、アプリをパーソナライズする上ではユーザーの個人情報や行動履歴を収集する必要があるため、プライバシー保護や情報管理にも気をつける必要があります。
適切な情報管理と分析をおこなって、より自社サービスの認知や利用を広めていきましょう。
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