プライバシーポリシーは、利用者に対して、「どんな個人情報をアプリ内で収集・利用するのか」などを明示する文章であり、利用者の権利を守ったり、アプリ運営者の責任を明示したりすることにもつながるなど、個人情報を扱ううえで重要です。
今回は、アプリ開発・配信前に確認しておきたいプライバシーポリシーの意味や記載すべき項目、作成時の注意点について解説します。
プライバシーポリシーとは?

プライバシーポリシーとは、利用者から得た個人情報の使い方を明記した文書です。たとえば、アプリでは、氏名やメールアドレス、住所、電話番号、場合によっては位置情報など、利用者から取得した情報をどのように扱うかについて詳細に記されています。
この文書は、個人情報保護法に従って作る必要があるため、常に最新情報を把握し、法改正が行われた場合は必要に応じて書き換える必要があります。
参考:「個人情報保護法」を分かりやすく解説。個人情報の取扱いルールとは?|政府広報オンライン
プライバシーポリシーの作成は義務?
2025年2月現在、法的な面だけを見れば、アプリ向けのプライバシーポリシーを作成する義務はありません。
しかし、個人情報の保護に関する法律では、個人情報の利用目的を公開する義務(21条)や、第三者にデータを提供する際に本人の同意を得る義務(27条)が定められています。
また、利用者は個人情報の取り扱いに対して敏感です。情報管理が不十分だと誤解を招き、社会からの批判につながる可能性も考えられます。以上から、法律上の義務はなくても、実際の運用上はプライバシーポリシーを整備することが望ましいと言えるでしょう。
プライバシーポリシーの種類

法律や利用者からの信頼を守るために必要なプライバシーポリシーは、2種類あります。必要に応じて、ふたつの内容を記載し、提示しなくてはなりません。以下では、プライバシーポリシーの種類と、その特徴や違いについて解説します。
共通のポリシー
共通のプライバシーポリシーは、アプリを利用する利用者全員に適用される内容をまとめたもので、登録時や起動時などに提示されることが多いです。
たとえば、地図アプリの中には、現在の位置情報を読み取り、ナビなどに利用する機能が搭載されています。この機能を使うには、利用者の位置情報を読み取らなくてはなりません。この機能がアプリの標準機能である場合、すべての利用者に位置情報を使う機能がある旨や、その使い方を提示する必要があります。この位置情報に関する内容が、共通のプライバシーポリシーです。
アプリを利用する利用者ごとに個別のプライバシーポリシーを作るのは、かなり大変です。内容を作る手間だけでなく、修正や変更があった場合の対応にかかる手間も発生します。共通のプライバシーポリシーを作成・提示しておけば、作成や変更の手間もひとつの内容だけで済む分、手間がかかりません。
利用者が使う頻度が高そうな機能や、会員登録などアプリを使う際に必要な個人情報を取り扱う際は、共通の内容のものを提示しておきましょう。
個別のポリシー
アプリごとに取得する個人情報や利用方法が異なる場合、共通のポリシーだけでは対応しきれないことがあります。たとえば、複数のアプリやサービスを提供している場合や、アプリごとに集める情報が違う場合は、個別のプライバシーポリシーを用意したほうが利用者に分かりやすくなります。
この場合、各アプリでどの情報をどのように使うかを明確に示すことが大切です。まずは共通の内容もまとめた上で、各アプリ固有の情報について具体的に記載するようにしましょう。これにより、利用者は自分がどんな情報を提供し、どう扱われるかを簡単に理解できるようになります。
プライバシーポリシーに記載すべき項目

ここでは、プライバシーポリシーに記載すべき主な内容についてわかりやすく解説しています。特に優先して記載したい項目は以下の通りです。
タイトル
タイトルには、まずアプリ名と、個人情報を法律に基づき管理する旨を記載します。利用者が内容を理解しやすいよう、文書の役割や目的も簡単に示すとよいでしょう。
なお、タイトル自体が法的な効力を持つわけではありません。しかし、「プライバシーポリシー」の代わりに「個人情報保護方針」とすると、利用者がこの文書を個人情報保護法のみのものと誤解する恐れがあるため、注意が必要です。
アプリ提供者の名前・問い合わせ先
プライバシーポリシーには、個人情報を扱う事業者の名前を必ず記載しなければなりません。複数の事業者が関与している場合は、情報の取得や利用に責任を持つ全ての名前を記載する必要があります。また、利用者が内容について問い合わせできるよう、専用フォーム、電話番号、メールアドレスなどの連絡先も別枠で明記しましょう。
個人情報の取得方法
プライバシーポリシーでは、どのような方法で個人情報を集めているかを必ず記載する必要があります。アプリの場合、情報の取得方法は主に二つに分かれます。一つは、利用者が自分から入力する方法です。
たとえば、会員登録時に住所や電話番号をフォームに入力してもらう形がこれに当たります。もう一つは、アプリの利用中に自動的に情報を集める方法です。この場合、利用者が気づかないことがあるため、必要な情報を自動で取得する旨を明記し、同意を得る形にしなくてはなりません。どちらの方法を採用しているか、はっきりと記載することが重要です。
アプリで取得した個人情報の種類と利用目的
アプリで集める個人情報と、その利用目的も記載しましょう。たとえば、氏名や住所、電話番号など、単独で個人を特定できる情報に加え、アプリ内IDや電話帳の内容など、ほかの情報と合わせると個人が識別できるものも含まれます。
また、どの情報をどのように使うのか、具体的な利用目的をしっかり説明することが求められます。利用者が「どんな情報が何に使われるのか分からない」と不安にならないよう、明確な記載を心がけましょう。
掲載場所や通知方法・利用者関与の方法
プライバシーポリシーの、掲載場所、変更があった際の通知方法、そして利用者がどのように関与できるかを明記する必要があります。たとえば、公式サイトやアプリのダウンロードページに掲載することで、利用者が簡単に確認できるようにします。変更内容が出た場合も、どこで公表されるかを記載し、利用者が常に最新の情報を把握できるようにしましょう。
利用者からの同意を得る方法も大事なポイントです。たとえば、アプリを初めて起動する際に、利用規約や同意内容を表示し利用者に確認してもらう方法があります。
また、利用者が自ら操作して情報の収集を開始・停止できる機能を用意することも求められます。たとえば、アプリを削除することで自動的に情報の収集が止まる仕組みなど、具体的な手順を示すことで、利用者は自分の情報がどのように使われるかを把握できるので、安心してアプリを利用できるようになります。
外部送信・第三者提供。情報収集のモジュール
アプリで取得した情報を、自社以外の相手に送ったり提供したりする場合、その詳細をプライバシーポリシーに記載する必要があります。たとえば、広告表示などに使うための情報を外部サーバーに直接送る機能があると、その仕組みや提供先について明らかにしなくてはなりません。
このような機能を「情報収集モジュール」と呼びます。利用者のデータは自社サーバーを通さず、直接第三者のサーバーに送られるため、送信された内容を完全に管理することはできません。情報の管理は、モジュールを提供する側が行います。そこで、プライバシーポリシーには、情報収集モジュールに関するリンクを設け、利用者が提供元や取り扱いについて確認できるようにすることが大切です。
共通のプライバシーポリシーとの関係
共通のプライバシーポリシーと各アプリ専用のプライバシーポリシーの両方を用意する場合は、どちらがどの内容に適用されるかをはっきりさせる必要があります。
たとえば、各アプリの文書に記載がない事項については共通のポリシーが適用され、もし両方で同じ内容に矛盾がある場合は、アプリ専用のポリシーが優先されると明記しておくとよいでしょう。
制定日と改定日
プライバシーポリシーは、制定または改定した日を明記しておく必要があります。また、改定した後も制定日を残しておく必要があります。制定日・改定日は、すべての履歴を残しておきましょう。どの時点の内容が有効だったかが一目で分かるようになります。
さらに、内容に大きな変更があった場合は、利用者に変更内容を知らせ、再度同意を取得する必要があります。通知方法や利用者が同意する方法も、あらかじめ記載しておくとよいでしょう。
プライバシーポリシーを作成・運用する上で押さえたいポイント

プライバシーポリシーを作成し、運用する上で押さえておきたいポイントは以下の3つです。
透明性を確保する
プライバシーポリシー作成の基本は、どんな情報をどのように利用するかを具体的に記すことです。登録した個人情報を、どのように活用するかをはっきりさせることで、利用者に安心感を与えられます。
利用目的は「マーケティング目的に利用する」などの曖昧な表現ではなく、「メールで新商品情報や特別オファーをお知らせするため」といった具体的な記述が必要です。他社との情報共有がある場合は、どのデータをどの目的で提供するかを明確にし、必ず利用者に同意を得る仕組みを設けましょう。
誰が読んでもわかりやすいものにする
プライバシーポリシーは、誰にでも分かるように作成することが大切です。たとえば、アプリのダウンロードページや公式サイトのトップに目立つ形で掲載し、利用者が利用前にすぐ確認できるようにしましょう。
全文が長くなる場合は、主要な内容―提供者、収集する情報、利用目的、第三者への提供方法など―をまとめた概要版を作り、詳細が記載されたページへのリンクを設けるとよいです。
また、アプリ内ではメニューの上部にリンクを配置し、いつでも参照できるように工夫します。さらに、難しい用語や曖昧な表現を避け、誰が読んでも同じ意味で理解できる文章にまとめることで、利用者の信頼を得やすくなります。
取得する個人情報は最低限にとどめる
プライバシーポリシー策定時には、集める情報を最小限にとどめます。たとえば、イベント案内だけが目的であれば、名前とメールアドレスだけを取得すれば十分です。このように余分な情報収集を避けることで、管理コストやセキュリティリスクを削減できる効果が期待できます。利用者のプライバシー保護が強化されるため、安心してサービスを利用してもらえる環境が実現されます。
まとめ
プライバシーポリシーは、アプリに関わる法律を遵守し、責任の所在を明確化するとともに、利用者に安心して利用してもらうために必要なものです。法律上、プライバシーポリシーの作成は義務ではありませんが、きちんと作成することで利用者に対して透明性を示し、安心感を与えることができます。
自社のサービスに適したプライバシーポリシーを作成する際は、ぜひ今回紹介した情報をご活用ください。なお、この記事の内容は投稿時点の法令や制度に基づいています。活用する際は、必ず最新の情報を確認し、適切に対応するようにしましょう。
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