アプリ開発の工程のひとつである要件定義は、なぜ必要なのでしょうか。
初めてアプリ開発に関わる方の中には、その必要性を理解できない方もいらっしゃるかもしれません。
要件定義は、アプリ開発をスムーズに進めるためには欠かせない工程です。
今回は、要件定義とはそもそも何なのかなどの基本的なところから解説し、要件定義書の作り方までをお伝えします。
要件定義とは?アプリに必要な機能を落としこむ作業
要件定義とは、開発するアプリに必要な機能やデザインなどを落とし込んでいく作業です。
アプリ開発の目的を明確にし、完成イメージをクライアントと共有する際に必要になります。
アプリの概要や機能をまとめた要件定義書を作成するのが、主な作業です。
要件定義書に不備があると、そのあとの工程にも影響が出ます。アプリ開発をスムーズに進めるためには、求められる内容をきちんと記載しなくてはなりません。
アプリ開発に要件定義が必要な理由
アプリ開発の目的が定まっていないと、本来の目的を達成できなかったり、搭載すべき機能やデザインが備わっていないアプリができてしまいます。
せっかくアプリを作っても、これでは意味がありません。
また、要件定義があやふやなままアプリ作成に取りかかってしまうと、途中で行き詰ったり、一から作り直したりする事態に遭遇する可能性が高くなります。
最悪の場合、アプリの開発自体を中止しなくてはならない事態になりかねません。
要件定義を行うことで、アプリを開発する目的や、搭載すべき機能を明確化できます。目的や作りたかったアプリの内容から、実際のアプリがぶれてしまうのを防ぐことができるのです。
アプリの要件定義に必要な要素
アプリ開発で要件定義書を作成する際には、以下の3つの要素が必要です。
アプリの開発方法
まずはアプリをどのような形で開発するかを決めましょう。
アプリ開発にはさまざまな方法があり、それぞれコストや開発にかかる期間やできることが異なります。開発したいアプリに合わせた方法を選ばなくてはなりません。
たとえば、開発方法だけで大きく分けると、フルスクラッチ開発とパッケージ開発のふたつに分けられます。
フルスクラッチ開発
フルスクラッチ開発は、一からアプリを作る方法で機能やデザインなど独自性の高いアプリを作成できるのがメリットです。
魅力的ですが、その分制作時間とコストがかかります。
パッケージ開発
一方、パッケージ開発は一般流通しているソフトを使って開発する方法です。
自由度はフルスクラッチ開発に劣りますが、大幅にコストカットでき、修正やアップデートが簡単にできるというメリットがあります。
なお、同じ開発方法でも開発するアプリが対応する端末が異なれば、同じ方法でも使うツールなどが変化するため、まったく同じとは限りません。
アプリの開発方法は、開発の根幹です。たくさんある方法の中から、メリットとデメリットをよく理解したうえで決定しましょう。
主な機能
アプリの開発方法だけでなく、機能についても決める必要があります。
主な機能を決めるときは、アプリを使って達成したい目標や課題を明確にすることが重要です。
ここがきちんと決められていないと、アプリ自体の価値もぶれてしまいます。
結果、開発がスムーズにいかなくなったり、開発プロジェクト自体が空中分解したりなどの事態を招いてしまうのです。開発方法同様、主な機能もきちんと決めておきましょう。
主な機能を決める際は、まず必要最低限の機能を書き出します。
細かい機能は一度横に置いておきましょう。目的や課題を達成するために、必ず搭載しなくてはならない機能をリストアップしてください。
なお、細かい部分の機能は主な機能が決定した後に考えましょう。
必要な機能が決まっていれば、つけるべき機能とそうでない機能の区別がつきやすくなります。付いていたほうが便利な機能があれば、ピックアップしてください。
ユーザーに支持されるアプリを作るには、搭載する機能ばかり考えるのではなく、搭載を見送る機能も考えなくてはなりません。要件定義の時点で整理しておきましょう。
UI(ユーザーインターフェース)
UIとは「User Interface」の略で、ユーザーとシステムやサービスをつなぐ接点を指す用語です。
アプリにおけるUIの定義とは、ユーザーが実際に操作する画面の設計を意味しています。具体的には、以下のような内容を決める部分です。
・TOPやメニュー画面のデザイン
・リンクボタンと画面遷移
・アプリの機能やコンテンツの利用・閲覧方法
ユーザーが実際にアプリを使う際の操作をイメージしながら、デザイン面での軸を決める部分です。
形のないものを決める要素もあるため、ほかの要素より難しく感じる方もいるかもしれません。
具体的な提案をするのが難しい場合は、自分の欲しいデザインや機能に近いアプリを活用しましょう。すでに配信されているアプリのデザインや機能の中から、イメージしているものに近いものを探し、例として活用すると伝わりやすくなります。
要件定義書の作成方法
アプリ開発における要件定義書は、3つのフォーマットに沿って作成するのがおすすめです。
・機能仕様書(FSD)
・ユーザーストーリー
・ワイヤーフレーム
アプリや開発環境により適した要件定義書の作成方法は異なりますが、おおまかなフォーマットは変わりません。
このほかにもさまざまなフォーマットがあるため、必要に応じて検討しましょう。
機能仕様書(FSD)
機能仕様書は、ソフトウェア開発でよく用いられている標準的なフォーマットです。
アプリ開発に必要な要件がまとめてあり、アプリの機能やアプリを用いてできる作業・行動などを記載します。
機能仕様書を採用する場合は、要件を構造的に記述しましょう。記述漏れや見落としがあると、開発に支障をきたします。
漏れや見落としを防ぐために、箇条書きで記載しましょう。主文で使用を明確にし、補足文で必要な情報を追加してください。
機能仕様書を使用する場合、アプリに使う端末やプラットフォームの知識・ソフトウェア開発の経験が求められる場合があります。
そのうえフォーマットの性質上、かなり細かい部分まで記述しなくてはなりません。アプリ開発の知識や経験がまったくない場合は、別のフォーマットの方が書きやすいでしょう。
ユーザーストーリー
ユーザーストーリーは、アプリ開発の要件をユーザー目線で記述します。
プロジェクトを細かく区切り、短時間で実装とテストを繰り返すアジャイル開発に適しているフォーマットです。
開発の際は、ユーザーストーリーが開発の核となり、そこからストーリーをマッピングしながら進めていく形を取ります。
仕様変更や機能の追加を繰り返しても、ユーザーストーリーが核となっているため、方向性のブレが起こりにくいです。
便利ですが、ユーザーの目的が軸になることを忘れてしまうと、機能を果たせなくなります。
ユーザーストーリーを考えるときは、アプリを開発する目的やユーザーの求める内容などの軸を忘れないようにしましょう。
ワイヤーフレーム
ワイヤーフレームは、アプリやウェブサイトの完成イメージを枠や線でおおまかに表現する設計図です。
アプリ開発では、完成するアプリイメージを共有することを目的に、要件定義書のフォーマットとしても活用できます。視覚的に表現したい場合に便利です。
要件定義書には、アプリの機能や操作の細かい部分だけでなく、全体構造も必要です。ワイヤーフレームを活用して、アプリの全体構造を視覚的に確認できるようにしておきましょう。
文章だけでなく線や図形を用いて、一目で内容が分かるような要件定義書を作成してください。
スケッチはアイディア整理に使うため、フリーハンドでも問題ありません。アイディアをまとめたら、コンテンツや機能などの重要な要素を整理しながらワイヤーフレームを作成します。
特にアプリ開発では文章だけでは伝えにくい要素も多いため、ワイヤーフレームを活用しましょう。
アプリ開発での要件定義のポイント
アプリ開発における要件定義のポイントを解説します。
開発者と綿密なコミュニケーションをとる
アプリ開発に限ったことではありませんが、複数人のメンバーで集まって作業する際は、綿密なコミュニケーションを取らないと成功できません。開発中はこまめにコミュニケーションを取りましょう。
特に要件定義はアプリ開発をスムーズに進め、成功に導くための重要な要素です。
細かく、小さな部分でも、齟齬があるとその後に大きな影響を与えることもあります。
要件定義書を作成する際は、こまめなコミュニケーションを心がけながら行ってください。
費用の目安を決めておく
当然ですが、アプリ開発には予算が必要です。予算内に開発費を納めるには、開発方法や搭載する機能などをよく話し合い、共有しなくてはなりません。
予算の共有が不十分だと金銭的なトラブルを招く原因にもなります。
これは、社外にアプリ開発を依頼するときはもちろん、社内でチームを組んで制作する場合も同様です。
予算の共有ができていないと、他部署と連携して活動する際に思わぬトラブルを引き起こしかねません。
要件定義を行う際は、開発を依頼する際の費用や、社内エンジニアの人件費などもよく考えましょう。
そのうえで、かけられる予算を決めてください。また、予算の金額は社内外問わずきちんと共有してください。

完成イメージと戦略を共有する
共有すべきなのは、アプリのイメージや予算だけではありません。完成後のイメージや事業内容・マーケティング戦略も必要です。
アプリ開発に焦点を向けていると、事業内容やマーケティング戦略は、あまり関係がないように思えるかもしれません。
しかし、アプリを開発する背景を知らない状態では、よりよいアイディアを思いつくのはかなり難しくなります。
社外に開発を依頼する場合、アプリを開発する背景や求める内容を伝えれば、自分たちでは思いつかなかったよいアイディアを提供してもらえる可能性もあります。
社内で開発する場合も、事業内容を再度確認し、そのうえでアプリをどうマーケティング戦略に活かすかを知っている方が、作業しやすいです。
要件定義を行う際はアプリを作っているときだけでなく、完成した後もよく考えましょう。イメージや戦略の共有も忘れずに行ってください。
機能の優先順位や操作手順を決めておく
要件定義書には、実装予定の機能すべてに優先順位をつけて記載しておきましょう。
アプリの機能は、すべてのアイディアを盛り込めるわけではありません。開発の途中で、機能やデザインの実装を見送ることもあります。
見送る理由は開発状況によりさまざまです。予算や期間が足りない場合だけでなく、システム的な制限が原因の場合もあります。
このときに主な機能を切り捨ててしまうと、開発の目的を達成できません。
要件定義書には、実装予定機能はすべて記載しましょう。どんな小さいことでも漏らさず記載し、第三者が見ても優先順位の判断ができるような内容を心がけてください。
機能の優先順位とともに重要なのが、アプリの操作手順です。ユーザーがアプリを使う際、どのように操作するのかを分かりやすく記載しましょう。想定される操作の流れは、すべて記載してください。
ボタンにリンク先が記載されているなど、一目で操作方法が分かる流れでも必ず記載しましょう。開発側にとって当たり前のような内容でも、ユーザーには分からないことが多いです。
特に、アプリを使ったことがない方や、初めてスマートフォンなどに触れる方は、当たり前の操作でもつまずくことがあります。
アプリの操作手順は、初めてアプリなどを触るユーザーの立場に立って考えましょう。できるだけ細かくチェックしてください。
まとめ
要件定義は、アプリ開発を成功させるためには欠かせない要素です。
要件定義を決める際は、必要な要素を細かい部分まできちんとおさえておきましょう。漏れや抜けがあると後の工程によくない影響をもたらします。
また、要件定義書を作る際も注意が必要です。
要件定義で決めた内容を記載するだけでは意味がありません。要件定義書は開発の流れにより適したテンプレートが異なる点にも注意が必要です。
関連ページ:店舗アプリならアプリ作成のアプリメンバーズ