アプリ開発の費用相場や内訳は?コストを抑えるポイントも解説

アプリの開発には、多く費用が発生します。特に人件費は開発費のうち多くの割合を占めており、エンジニアを短期間雇用するだけでも、数百万円の費用が発生することもあります。

しかし、コスト削減ばかりを重視すると、アプリの質自体を下げてしまう可能性もあります。開発を始める前に、何にどれだけの費用をかけるべきか、精査しておかなければなりません。

本記事では、アプリ開発費用の相場を解説しつつ、費用を抑えるための方法をお伝えします。

アプリ開発の費用相場や内訳は?コストを抑えるポイントも解説

アプリ開発費用の大枠は、人件費・開発期間・開発工数の3つでおおよそ決まります。特に大きな割合を占めるのが、人件費です。

アプリ開発には、システムエンジニアをはじめとした専門性の高い人員がチームで開発を進めます。技術力の高い上級エンジニアに依頼すると、月額単価が100万円以上することもあります。

しかし、人件費を削減しすぎると、想定したアプリが開発できない可能性もあります。この点を考慮しつつ、人件費を適切にコントロールすることが、無駄のないアプリ開発に不可欠です。

アプリ開発では、工程によって発生する費用が異なります。ここでは、主な項目について順番にご紹介します。

企画設計とは、アプリ開発における初期段階です。目的、ターゲット、機能、デザインなど、技術的な側面を決定します。エンジニアだけでなく、プロジェクトマネージャーやディレクター、マーケティング担当者、デザイナーなど、複数の人員が関わることが一般的です。

この段階で発生する人件費は、関わる人員と稼働時間によって大きく異なります。たとえば、要件定義を行うプロジェクトマネージャーが1月あたり120~250万円、UI構成を検討するデザイナーが60~100万円程度の人件費が必要だと仮定します。2〜3名の人員が数か月関わるだけでも、200~350万円以上の費用がかかることも珍しくありません。

しかし、企画設計を曖昧にすると、後から仕様変更や設計の見直しが頻発し、総コストが膨らむ可能性があります。このコストはなるべく削減せず、総予算の20~30%を目安に予算を組みましょう。

アプリの使いやすさや第一印象を左右するのが、画面デザインとUI設計です。ユーザーが直感的に操作できる構成を作るためには、単に見た目を整えるだけではなく、ユーザー体験(UX)を意識した設計が求められます。

この工程では、ワイヤーフレームの作成、画面遷移の構築、アイコンやボタンのデザインなどを行い、完成後の操作感をシミュレーションしながら調整を重ねていきます。

UI設計には、UIデザイナーやUXディレクターなどの専門職が関わります。1人月あたりの単価は60〜100万円前後が相場で、規模や画面数によってはそれ以上かかる場合もあります。加えて、複数の画面パターンや端末サイズごとの調整が必要な場合は、さらにコストが上乗せされることもあります。

アプリの見た目や操作性は、ユーザーの継続利用に大きく影響します。ユーザーにとって使いやすく設計されていれば、機能以上の満足感を得られることも。そのため、デザイン費用は装飾費ではなく、ユーザー満足度を高めるための投資と捉え、適切に予算を配分することが重要です。

アプリ開発における中心的な作業が、プログラミングと機能の実装です。設計段階で決定した仕様に基づき、フロントエンド(画面側)とバックエンド(データ処理やサーバー側)のコードを書き進めていきます。

この工程には、アプリの構造を理解し、正確かつ効率的に機能を組み上げるスキルが求められるため、開発エンジニアの人件費が大きな割合を占めます。人件費はエンジニアの経験や担当領域によって異なりますが、一般的に1人月あたり60〜100万円程度が相場です。

たとえば、中〜大規模のアプリでは、数名のエンジニアが2〜3か月以上かけて開発するケースもあります。すると、人件費だけでも300〜600万円以上の予算が必要になることもあります。

また、iOSとAndroidの両方に対応する「ネイティブアプリ」を開発する場合は、プラットフォームごとに別々のエンジニアが必要となり、その分コストが膨らみます。近年では、React NativeやFlutterなどのクロスプラットフォーム技術を用いてコストを抑える手法もありますが、それでも一定の開発工数は避けられません。

一般的には、プログラミング・実装にかかる費用が開発費の最も大きな割合を占めています。全体の費用の40~50%に収まるように、予算を組みましょう。

パッケージ製品を用いて開発する場合、ソフトウェアの定期ライセンス費用が必要です。開発に用いるツールやソフトウェアにかかる費用も計上されます。

ライセンスは1年に1回更新の年間ライセンスが一般的ですが、月額ライセンスを使用していた場合、月ごとに費用が発生します。特に、商用利用が前提となるアプリでは、フリーソフトでは対応できないことが多く、正規の有償ライセンスが求められます。

人件費などに比べるとそれほど大きな費用になることはありませんが、積み重なれば金額は増大していきます。少額だからと見落とさず、正確な金額を算出したうえで、予算に組み込んでおきましょう。

クラウドサービスが一般化した昨今、サーバー上でアプリを構築・提供するケースが増えてきました。クラウドを利用するとサーバーを一から利用する必要がないため、初期開発コストを安く抑えられます。しかし、サーバースペックを上げるとその分利用料も高くなるため、ランニングコストが増加する恐れもあります。

クラウドは提供会社ごとに価格が異なるうえ、サーバースペックによっても費用が異なるので、明確な目安金額はありません。利用するクラウドの価格や開発・運用におけるコストをよく考えたうえで、最適なサービスを選択しましょう。

アプリ開発を効率的に進めるためには、開発支援ツールの導入が欠かせません。開発支援ツールには、コード管理をサポートしたり、バグ検出をしたりするものまで、さまざまな種類があります。これらの導入によって開発スピードが向上し、複雑な機能も比較的簡単に実装できるようになります。

開発ツールには、バージョン管理システム、開発工数管理ツール、テスト自動化ツールなどがありますが、利用料のほかにユーザー単位でのライセンス料がかかることも。無料版では機能制限があったり、利用規約の観点で問題が生じたりする可能性もあるため、必要に応じて有料プランの契約が必要です。

アプリはリリースして終わりではなく、その後の運用にも継続的なコストが発生します。特に、ユーザーが増えるほど安定したサービス提供が求められるため、インフラの維持やトラブル対応などにかかる費用は無視できません。

代表的な費用としては、OS(オペレーティングシステム)のアップデート対応費があります。OSアップデートは、iOS、Androidで行われるメジャーアップデートに対応し、自社アプリも最新の状態へ更新する作業のことです。

アプリが最新のOSに対応していない場合、レイアウトの崩れや動作不良といったトラブルにつながることがあります。そのため、リリース後も継続してOSアップデートに対応するメンテナンス作業が必要となり、これに伴う費用が発生します。

OSアップデートに対応するには、まず不具合の有無を検証する作業が必要です。動作確認に加え、必要に応じてコードの修正や再ビルド、ストアへの再申請まで対応範囲は広がります。特にiOSのアップデートは年1回以上のペースで行われ、厳格な審査基準があるため、対応工数も多くなりやすいです。

アップデートにかかる費用は、アプリの機能の多さや複雑さ・対応が必要な機能の数によっても左右されます。一般的には1か月10~20万円は必要とされていますが、複雑な機能が搭載されたものの場合、より費用がかかるとみでいいでしょう。

アプリ開発にかかる費用は、搭載する機能や種類によっても大きく変動します。ここからは、それぞれの費用相場について解説しましょう。

アプリにどの機能を実装するかによって、開発費用は変動します。機能を1つ実装するたびにコストが発生するので、機能が多くなるほどコストも増大していきます。そのため、何をどれだけ実装する必要があるのか、慎重に見極めなければなりません。

アプリにおける機能別の相場は下記の通りですので、参考にしてください。

機能費用相場
ログイン機能(メールアドレスなど)20~40万円程度
決済システム(システム構築を含む)30~50万円程度
ユーザー会員データ管理機能50~100万円程度
アプリデザイン10~100万円程度
データ利用(新規取得)50~70万円程度
SNS連携などの他社ツール実装5~40万円程度

シンプルであるほど費用はリーズナブルに済みますが、アプリの目的によっては、複数の機能を実装する必要性もあります。企画設計の段階で、どの機能を優先するべきか精査しておきましょう。

アプリはさまざまな種類があり、費用相場もジャンルによって異なります。以下の表は、種類別費用相場をまとめたものです。

種類費用相場
iPhoneアプリ約810~4,400万円
Androidアプリ約740~4,400万円
ECアプリ約900~3,700万円
ビジネスアプリ約740~3,000万円
フードデリバリーアプリ約590~2,200万円

それぞれの相場には大きな開きがありますが、これは搭載する機能や開発期間によって費用が異なるためです。具体的な費用を知りたい場合は、複数のアプリ開発会社に見積もりを出してもらうことを推奨します。

高品質なアプリを開発するためには、削れない予算もあります。たとえば、予算が不足しているからと必要以上に人件費を削ってしまうと、開発そのものに影響を与えることも。

ここからは、アプリの品質を維持しつつ費用を抑える方法を解説しますので、参考にしてください。

開発に関する費用を少しでも抑えるためには、アプリの要件に適した開発手法を選択するのが重要です。選択を誤ると開発期間が増え、人件費が増大する可能性があります。

複雑な機能を備えていたり、オリジナリティの高いものを制作したりするなら、ゼロからコードを書いていくフルスクラッチが適しています。しかし、シンプルなアプリを想定しているなら、フルスクラッチである必要はありません。

パーツを組み合わせるだけでアプリを制作できるノーコード開発や、最小限のソースコードでシステムを構築できるローコード開発なども検討しましょう。

アプリ開発には、数百~数千万円単位の費用が発生することも珍しくありません。しかし、コストを抑えてしまうと、アプリのクオリティに影響を与えてしまうことも。コストを抑えつつクオリティを確保するには、国や自治体の補助金を使って費用の一部を補填するのも有効な方法です。

アプリ開発の補助金には、下記のようなものがあります。

  • IT導入補助金
  • ものづくり補助金
  • 事業再構築補助金
  • 小規模事業者持続化補助金

補助金は申請すれば必ず受けられるものではなく、それぞれに応募期間や条件が定められています。補助金を活用する際は、自社が開発するアプリはどのような制度に該当するか調べてみるといいでしょう。

アプリ開発を丸ごとひとつの会社に依頼すると、全工程にかかる費用を算出しなくてはなりません。そこで、工程ごとに切り出して契約すれば、トータル費用を抑える効果が期待できます。

たとえば、要件定義だけを自社で行い、システム開発やデザインはリーズナブルかつ高品質に作れる企業やクリエイターに依頼する方法があります。さらにコストを抑えたい場合は、工程ごとに契約する方法も検討しましょう。

MVP開発とは、はじめは最小限の機能でリリースし、ユーザーからのニーズに応じて機能を追加していく方法です。最低限の機能だけで開発し、段階的に機能を増やしていくため、初期費用を抑えられます。

ユーザーからのフィードバックをもとに修正できるため、不要な機能を開発する必要がありません。トレンドを素早くつかめるため、市場適応性を高められるのも大きなメリットです。

MVP開発を成功させるためには、ユーザーにとって必要な機能を明確にし、開発の範囲を絞るのが重要です。また、ニーズにすばやく対応するためには、一定水準以上のスキルをもつエンジニアの存在も必要不可欠です。自社の状況により、エンジニアの育成や新規採用、外部委託などの手段を検討しましょう。

オフショア開発とは、海外の企業やエンジニアなどにシステム開発を依頼する方法です。日本よりも労働力が安い国の企業や技術者に開発を依頼することで、人件費や運用コストを大幅に抑えられます。

デメリットとしては、言語の違いや時差により、コミュニケーションが難しい可能性があること。言語や文化などが壁になり、仕様を細かく伝えられない恐れもあります。結果として、

プロジェクトの遅延やアプリの品質低下につながるリスクが生じます。

また、為替や政治的要因の影響を受けて、想定以上のコストがかかる可能性も否めません。委託先を選ぶ際は、使用する言語はもちろん、経済や政治の状況までチェックしておきましょう。

アプリの開発費用は、主に人件費、開発期間、開発工程の3つによって大枠が決まります。特に人件費は大きな割合を占めるため、工程ごとに契約形態を変えたり、オフショア開発を検討したりしましょう。

しかし、コストカットを追求しすぎると、アプリの品質低下やセキュリティの脆弱性などが発生するほか、ユーザーのニーズを満たせないことも。コストと品質の両方を見ながら、最適なバランスを探りましょう。

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