マーケティングオートメーション(MA)は、近年多くのアプリで導入されています。積極的に導入を検討している方がいる一方、MAとは本来どのようなものなのか理解できていない方も。
今回は、そんな方のために、MAとはそもそもどういうものなのかを解説します。あわせてアプリに導入する際のメリットとデメリットも取り上げますので、参考にしてください。
マーケティングオートメ―ションの定義

マーケティングオートメーション(MA)とは、マーケティング活動を一括管理し、活動を自動化・効率化することです。また、この一括管理を行うソフトをMAツールと呼びます。
通常、企業が受注数を増やすには、少しでも多くの見込み客を確保しなくてはなりません。そのためにはイベントでの名刺交換やメールや広告の配信などで、少しでも多くの見込み客やユーザーと知り合う機会を得る必要があります。
このとき、メールや広告の配信ツール・見込み客管理やアクセス解析ツールなど、複数のツールを用いてマーケティング活動を管理するのが一般的です。しかし、大量のユーザー情報を複数のアプリで管理し続けるのは、大変なうえに効率的ではありません。
MAはこれを一括化することで、より効率的かつ最適化する仕組みです。日本では2014年ごろから注目されるようになりましたが、アメリカでは1990年代から使われています。
主な機能
マーケティング活動を効率化させるMAですが、どのような機能が搭載されているのでしょうか。ツールごとに細かい違いはありますが、主な機能は以下の通りです。
- ユーザー情報のリスト化
- メール配信
- 営業への通知とアサイン
- 見込み客管理
- データ収集・分析
MAのユーザー管理機能を使えば、ユーザーを属性やサイト上の利用状況などで分類・管理できます。特定の情報をもとに見込み客を抽出し、リスト化すれば効率的なアプローチが可能です。
MAにはメール配信機能も搭載しています。リスト化機能でまとめたユーザーにメールで営業を行えば、より効果的なマーケティング活動ができるでしょう。ユーザーの反応ごとにリストを作り、それぞれに合わせたメールを送ることもできます。
MAを活用できるのは、マーケティング担当者だけではありません。MAの機能には、見込み客となる条件を満たしたユーザーを感知し、自動でアサインメールの送信やアラートによる通知を行う機能があります。
これらの機能を活用すれば、ツールで業務を自動化できる上に、マーケティング担当者から何度も連絡をもらう必要がなくなるので、より効率的な営業活動ができるようになります。
また、MAは見込み客管理における問題点にも効果的です。見込み客の検討度は、どうしても営業担当の感覚や過去のやり取りなどの、あいまいな要素で判断する傾向にあります。
MAはこれらの情報に加えてツールが見込み客の数値的な分析を行うことで、客観的な視点から見込み客を選別できるようになるのです。問い合わせページや資料ページを見ているユーザーなど、従来の支店では見つけられなかった見込み客を発見できます。
また、ユーザーの情報を収集・分析することも可能です。施策におけるユーザーの反応を数値にまとめ、グラフ化するなど、マーケティング活動の結果を分かりやすい形で確認できます。これらのレポートを定期的に作っておけば、より効率的なマーケティングを実践できるでしょう。
MAの機能はマーケティングにさまざまな効果をもたらします。このほかにもツールごとに搭載された機能があるため、導入を検討している方は一度どのようなものがあるか確認してみましょう。
CRMとの違い
MAと同じような働きをするものに、CRMがあります。一部同じ機能が搭載されているため、違いが分からない方もいらっしゃるかもしれません。しかし、MAとCRMはそれぞれ狙うターゲットが異なります。
CRMは本来成約後のユーザーを対象にしているツールです。商品やサービスを使っているユーザーをフォロー・サポートしたり、ユーザーのロイヤリティを分析したりする際に使います。
一方、MAがターゲットにしているのは、見込み客です。これから成約できる可能性のあるユーザーを絞り込んだり、購買や成約につなげたりするために使います。CRMのように成約したユーザーにも使えますが、基本は見込み客を追うためのものです。
どちらも顧客をフォローし成約につなげるために使われるため、似たような機能が搭載されていますが、ターゲットが異なります。混同しないよう注意しましょう。
導入時のメリット

MAを導入すると、さまざまなメリットを得られます。MAの機能を最大限に活かすには、導入によりもたらされるメリットについても知っておく必要があります。
本項では導入時のメリットを解説します。導入を検討する際は、以下のメリットが自社にどのような影響をもたらすかをよく考えたうえで取り組みましょう。
マーケティング効果の最大化
見込み客がどれだけ検討しているかが分からないと、的外れなタイミングや内容でアプローチしてしまうことがあります。これでは購買や成約にはつながりません。見込み客をユーザーに変えるには、顧客が求めている内容とタイミングに合わせたアプローチが必要です。
MAを使えば、見込み客が現在どのような検討段階なのかを客観的な視点で確認できます。MAの分析を確認しながらアプローチすれば、マーケティング効果をより高められるでしょう。現在見込みがない顧客でも、分析しながら中長期にわたってコミュニケーションを取り続ければ、購買や成約につなげられる可能性もあります。
見込み客ごとに管理・アプローチできるMAの機能を使えば、アナログではできなかった対応も簡単にできるでしょう。従来では眠らせていただけの顧客情報を、最大限に利用できるようになるのもMAがもたらすメリットです。
このことから、MAは、より多くの見込み客を購買や成約につなげたい場合や、見込み客へのアプローチを客観的に、的確に行いたい場合に有効なツールといえます。
人件費や時間の節約になる

MAの導入は、人件費や時間の節約に有効です。たとえば、見込み客を検討段階ごとにリストアップし、アプローチのためのメールを送るとします。アナログや従来のツールを使って行うと、以下の作業を行わなくてはなりません。
- 見込み客を複数リストアップする
- 検討段階に合わせたメール内容を作成する
- リストに合わせたメールをそれぞれ送信する
CRMなどのツールを用いたとしても、かなりの時間と手間がかかります。リストアップツールやメールなどの複数のツールを用いて行うとなると、より多くの時間と手間が必要です。しかし、MAを導入すればすべてひとつのツールに搭載された機能を使って対応できるので、時間や手間もほとんどかかりません。
また、MAのユーザー管理機能を使えば、ひとりのマーケティング担当で数千、数万人もの見込み客管理も可能です。たくさんの見込み客がいても、検討段階の低い見込み客はメールなどで対応し、購買や成約の可能性がある方だけに対面するなどの工夫をすれば、アプローチも楽にできます。
ひとりのマーケティング担当でたくさんの見込み客を管理・対応できるようになれば、大幅に人件費を節約できるでしょう。限られた時間内でも効率的にアプローチできるため、時間の節約もできます。より効率的にアプローチをしたいなら、MAの導入を検討しましょう。
マーケティングの効果測定ができる
MA導入で得られるメリットは、見込み客対応に役立つものだけではありません。マーケティング活動の振り返りにも役立ちます。
MAに登録された見込み客の反応やマーケティングの結果を集計・分析すれば、次の活動に活かせるでしょう。また、プロモーション内容を管理・分析した結果をすぐ提出できるようにしておけば、社内外の関係者との情報共有も簡単にできます。
改善点を洗い出せば、次回のアプローチをより魅力的なものにすることも可能です。見込み客やユーザーに好印象をもらえるアプローチを続けていけば、導入前よりも多くの購買・成約につながるかもしれません。
マーケティングの効果測定を定期的に行える環境ができれば、活動にかかっていた負担を軽減する効果も望めます。マーケティング活動の効果を高めたいなら、MAの導入を検討しましょう。
導入時のデメリット

マーケティング活動の効率化においてとても便利なMAですが、デメリットもあります。メリットを最大限に活かすには、デメリットを理解しておくことも大切です。ここでは、導入時に発生するデメリットを、対処法などを含めながら解説します。ツールを導入する際はメリットだけでなく、以下の内容を踏まえたうえで検討しましょう。
導入・運用のコストがかかる
MAは、導入・運用費用が大きく、費用対効果が出るまでに時間がかかります。費用対効果が出るまで時間がかかるのは、中小企業には少々つらいデメリットであるといえるでしょう。
最近はMAツールの中にも無料版が出回るようになりましたが、機能が限定されているものが多いです。また、効果を期待するなら高性能なMAツールを入れる必要がありますが、高価なものが多く、数百万円もの費用が必要な場合もあります。
また、MAは管理ツールのため、常に運用し、管理しなくては満足いく効果は得られません。そのため、常に担当者を配置する必要があります。MAの運用には、ツールを導入する際の費用だけでなく、運用に必要な人件費もかかってしまうのです。
このデメリットの対応策としては、導入前の計画やツールの選定が重要になります。MAを導入する前に、導入後どのような運営をし、成果を上げていくか計画を立てておきましょう。
計画を立てておけば、自然と自社が必要としている機能が分かるようになります。計画に沿ったツールを選ぶようになり、必要以上に高額なツールなどを選んでしまう心配もありません。費用の無駄を減らせれば、初期費用や運用費用がかかってもダメージを最小限に抑えられます。
運用スキルの必要性
MAツールの運用に必要なのは、費用だけではありません。専門的な知識と技術が必要です。MAを使い業務を自動化するには、効果的なシナリオを設計する必要があります。コンテンツを作成するには、プログラミング技術も必要です。
MAの運用が軌道に乗るまでは、これらのスキルを持った担当者の業務が一時的に増えてしまいます。業務量により担当者がこれまで行ってきた業務を、ほかの担当者に振り分ける必要も出てくるでしょう。業務自体の内容を大幅に変更する可能性もあります。
専門的な知識や技術を持つ人間が自社にいない場合、新たに雇用するか担当者に勉強してもらわなくてはなりません。人件費や業務の増加は、企業には見逃せないデメリットです。
対策としては、導入前の計画と同時にシナリオやコンテンツの作成を進めておくことが挙げられます。製品の開発や比較の時点から必要なものを作成しておけば、いざというときに動きやすくなるはずです。
顧客との関係性の低下
導入により、顧客との関係性が低下してしまう可能性もあります。見込み客を検討段階ごとに対応を変更するのは、とても効率的です。しかし、対応を変化させたことで見込み客からの印象が変化する可能性もあります。従来の対応を好んでいた見込み客の中には、MA導入後の対応を快く思わない方もいるかもしれません。
これを防ぐには、ツールに頼りすぎないようにすることが大切です。見込み客とのやり取りやそのときの印象をよくとらえ、そのうえでどのような対応をすればよいか考えましょう。
導入前の時点で好印象を持っている見込み客がいるなら、リストアップし、分析するのもよい方法です。MA導入の際は、導入前に築いた関係性も大切にしましょう。
まとめ
マーケティングオートメーションを導入すれば、導入前よりも効率的かつ効果的なマーケティング活動ができるようになります。メリットがたくさんあるツールですが、デメリットもあることを意識しましょう。
MAのデメリットは導入前の計画である程度は払拭できます。導入の際は、メリットだけに目を向けず、デメリットも含めたうえでご検討ください。