オムニチャネルとは、実店舗やWebサイト、SNS、店舗アプリなど、あらゆるチャネルを連携させて販促につなげる戦略です。
小売業やECサイトを運営している企業であれば、一度は耳にしたことがある言葉でしょう。
本記事では、オムニチャネルのメリット・デメリット、成功のポイント、O2Oとの違いについて解説します。
- オムニチャネルとは
- オムニチャネルのメリット
- オムニチャネルのデメリット
- オムニチャネルの導入の仕方
- オムニチャネルを成功させるためのポイント
- まとめ
オムニチャネルとは
オムニチャネルとは、あらゆるメディアを駆使して顧客と接点を作り、経路を問わず販促につなげる施策のことです。
オムニチャネルの導入によって、ECサイトから注文した商品を実店舗で受け取ったり、実店舗に在庫がない商品をその場で注文できたりします。
つまり、オンラインとオフラインの垣根を越えて、いつでも一定の水準のサービスを顧客に提供できるようになります。
販促につなげるために活用できる経路は主に以下の4つです。
・実店舗
・Webサイト
・SNS
・アプリ
例えば、ある商品を購入したい顧客が実店舗に来たとき、在庫切れのため提供できなかったとします。店員がその場でオンライン上から注文し、決済と配送手続きを済ませられれば、顧客を逃さず売り上げを伸ばせます。
また、オムニチャネルはWebルーミングへの対策も可能です。
Webルーミングとは、店舗で実際に商品を見たあと、別のネットショップで安く購入されることです。実店舗の売り上げを低迷させる可能性があるため、自社で購入してもらうための仕組みを作りましょう。
なお、オムニチャネルのオムニは、ラテン語のOmni(オムニ)からきています。Omniは「あらゆる、すべての」という意味を持ちます。チャネルの意味は「経路、集客のための媒体」です。つまり、すべてのチャネルを連携、統一させるということです。
O2Oとの違い
O2Oはオムニチャネルと混同しやすいものの、まったく異なります。
オムニチャネルとの違いを以下にまとめました。
作戦と手法 | 特徴 |
オムニチャネル | 顧客を誘導しない |
O2O | 顧客を誘導する |
O2OはOnline to Offline(オンライン トゥ オフライン)からきていて、オンラインからオフライン(またはその逆)に顧客を誘導するマーケティング手法です。
オンラインかオフラインへ顧客を誘導する具体的な方法は以下のとおりです。
誘導する方向 | 具体的な方法 |
オフライン | アプリをダウンロードしてもらうために店頭でチラシを配布する |
オンライン | 実店舗で使えるクーポンや割引特典をWebサイトやアプリで付与する |
O2Oは顧客をオンラインかオフラインに誘導して購買につなげます。
オムニチャネルは商品の購入の仕方を顧客に選択してもらうことを前提としています。

オムニチャネルのメリット
オムニチャネルのメリットは以下の通りです。
機会損失のリスクを低減できる
機会損失のリスクを低減できるのは、適切な在庫管理ができるためです。
オフラインとオンラインを連携させて在庫管理できれば、顧客に商品を提供できなくなるリスクを低減させられます。
一例としてアイウェアを扱っている店舗でいえば、Webサイトやアプリ上でカメラ機能を使って眼鏡を試着する、商品の返品交換の手続きをオンライン上で済ませるなどが可能です。
また、商品について気になることをチャットボットから問い合わせてもらい、その場で問題を解決できるようにします。
いつでも快適にサービスを利用してもらえるようになれば、顧客満足度の向上とクレームの減少が見込めます。
顧客の管理と分析がしやすくなる
顧客の管理と分析がしやすくなるのは、すべてのチャネルを統一しているためです。顧客の情報を一元管理するため、一貫したマーケティングを実現できます。
例えば、顧客の情報を実店舗では帳簿、オンラインではシステムで管理しているとしましょう。情報の連携ができていないため、顧客への連絡が重複したりできていなかったりする可能性があります。
顧客管理がそれぞれのチャネルによって異なるためにトラブルが起きれば、来店者数が減ったりクレームが届いたりするでしょう。
オムニチャネルはすべてのチャネルで情報を一元管理するため、情報の行き違いを防げます。
業務効率を向上させられる
業務効率を向上させられるのは、情報を一元管理できるためです。在庫や顧客などの情報を実店舗とオンラインとでシームレスに共有できるため、連絡の行き違いや情報の鮮度の違いによるミスやトラブルを未然に防げます。
情報をスムーズに共有できれば、業務効率が向上して従業員の負担を減らせます。
オムニチャネルのデメリット
オムニチャネルのデメリットは以下の3つです。
・実店舗の売り上げが低下する恐れがある
・成果が上がるまでに時間がかかる
・初期費用がかかる
実店舗の売り上げが低下する恐れがある
オンラインに顧客が集中すると、実店舗の売り上げが低下する恐れがあります。
そのため、売り上げの変動による人員配置の変更を視野にいれておきましょう。
また、チャネル同士で顧客の奪い合いを避けるための施策も必要です。
成果が上がるまでに時間がかかる
成果が上がるまでに時間がかかるのは、顧客に認知してもらえるまで時間がかかるためです。
例えば、ECサイトを開設したとします。ECサイトは競合が多く、売り上げにつながりにくいため顧客に存在を知ってもらうための戦略が必要です。
開設したばかりのサイトを認知してもらう方法には、SNSやWebサイトでの告知やキャンペーンなどがあります。新しいサービスを顧客に知ってもらい、利用してもらえるようになるまで時間がかかるため、改善と分析を繰り返しおこなう姿勢が求められます。
初期費用がかかる
初期費用がかかるのは、チャネルを増やしたり情報管理システムを導入したりするためです。
実店舗をメインに運営してきたなかで新たにWebサイトを開設するとしましょう。Webサイトの制作ツールやサーバー費用など、サイト運営に関する費用がかかります。
また、実店舗とECサイトの両方で顧客や在庫情報を一元管理するときは、管理システムやデータベースシステムの導入費がかかります。
オムニチャネルの導入の仕方
オムニチャネルを導入する手順は以下のとおりです。
ロードマップを作成する
ロードマップの作成にあたって、目的と目標を明確にしましょう。目的と目標は、
「チャネルを連携させる目的」「完成させるまでの日数」「連携させるチャネルの選定」などが挙げられます。
これらのポイントから自社の状況を洗い出し、目標を達成させるために何をすればよいのかを考えます。
オムニチャネルを導入する目的と達成したい目標を定めたら、スタッフ全員に共有しましょう。
ユーザーへのアプローチ方法を検討する
ユーザーへのアプローチを検討するときは、顧客がどのようにして自社の商品を知り、購入してくれているのかを分析します。分析した結果を基に、販促手法を検討しましょう。
オムニチャネルは、販促手法の幅をグッと広げてくれます。例えば、飲食店やアパレルで考えてみましょう。
顧客にアプリやWebサイト上から購入(予約)してもらい、実店舗で商品を受け取ってもらう仕組みが作れます。ほかに、キャッシュレス決済を導入して幅広い決済方法に対応すれば顧客の利便性の向上につながります。
オムニチャネルで重視すべきは、システムを使って何をするか(できるか)を考えることです。オンラインとオフラインの垣根を越えた販促手法で、より多くの顧客に効果的にアプローチしましょう。
各チャネルをオムニチャネルに統一させる
各チャネルをオムニチャネルに統一させるときは、チャネルの役割や位置づけを明確にし、社内体制を構築します。
理想は24時間365日、どのチャネルからアクセスしても同じ水準のサービスを提供することです。
そのため、全チャネルでコンセプトを共有しましょう。シームレスなチャネルの連携には、各チャネルの担当部門との横のつながりが欠かせません。
顧客や在庫の情報を一元管理する
顧客や在庫の情報は、一元管理システムを導入して共有します。情報の一元管理によって、顧客により利便性の高いサービスを提供できるためです。
例えば、実店舗とネットショップでポイントカードを個別に発行していたとしましょう。
一元管理によって顧客情報と購入履歴などを共有できれば、それぞれのカードを管理してもらう手間が省けるうえ、ポイントがたまる楽しみをより強く感じてもらえます。
また、在庫情報を全チャネルで共有すれば、顧客が競合に流れるリスクを回避できます。なぜなら、店舗にない商品をオンラインショップから注文、決済できるためです。
より利便性の高いサービスを実現させ、顧客に自社を利用する価値を提供しましょう。

オムニチャネルを成功させるためのポイント
オムニチャネルを成功させるためのポイントは、次のようなものが挙げられます。
情報を一元化して管理する
情報の一元管理にあたって、CRMシステムを導入しましょう。CRMシステムは、顧客と情報を一元管理するための専用システムです
CRMシステムには顧客に気持ちよくサービスを利用してもらうために必要なものが搭載されています。
※CRMシステムの機能(例:顧客情報管理、購買履歴分析など)
ただし、システムを提供する企業によって料金や機能が異なる点に注意しましょう。導入するときは、必ず複数から比較、検討して自社に合ったものを選びます。
一貫したブランドイメージを作る
オムニチャネルの導入にあたって、一貫したブランドイメージを作りましょう。理由は、ブランドイメージの統一によって顧客に自社を認知、意識してもらうためです。
ブランドイメージが固まったら、社内全体で共有します。
顧客が商品を見たとき、すぐに自社をイメージしてもらえるように、チャネル全体でブランドイメージを統一しましょう。
各チャネルの特徴と役割を明確にする
各チャネルの特徴と役割を明確にするのは、チャネル同士で顧客を奪い合わないようにするためです。
ターゲット層をチャネルごとに設定すれば、アプローチすべき層が変わるため対象の顧客を分散させられます。SNSは若年層、Webサイトは見込み顧客といったように、アプローチするターゲットをそれぞれに割り振りましょう。
また、既存のサービスのポジションを再定義して、新規サービスとの重複を防ぎます。新規サービスとの重複を防ぐために、既存のサービスのターゲットを確認し、業績を分析します。
分析の結果、サービス内容が重複するときはどちらかを廃止することも視野に入れましょう。
企業全体で協力して取り組む
企業全体で協力して取り組むことが、売り上げの向上につながります。すべてのチャネルで顧客を獲得し、相乗効果を生み出して業績を挙げることを意識しましょう。
そのため、全社員が情報を共有できるよう体制を整える必要があります。全社員で共有すべき情報は、オムニチャネルで達成したい目標や目的、ブランドイメージ、顧客情報や
在庫情報などが該当します。
オムニチャネルは部署や部門を横のラインでつなぐものなので、スタッフ全員が協力しあえる体制を整えましょう。
まとめ
オムニチャネルとは、あらゆるメディアから顧客を獲得して販促につなげる戦略のことです。実店舗やWebサイトなどからアクセスした顧客に対し、一定の水準を保ちながらサービスを提供できるようにします。
CRMシステムで顧客や在庫情報を一元管理するため、情報の食い違いや連絡ミスなどを防げます。また、顧客の分析や管理がしやすくなるため、より精緻なマーケティング施策を考えやすくなります。
オムニチャネルを成功させるポイントは、各チャネルの特徴と役割を明確にして、企業全体で取り組むことです。また、スタッフ全員が協力しあえる体制を整えることも求められます。
オムニチャネルの導入に向けて、社内体制を見直すことから始めてみてはいかがでしょうか。
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